2019 Fiscal Year Research-status Report
A Research on the Construction Process of Local Support Platform
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17K01912
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
夏秋 英房 國學院大學, 人間開発学部, 教授 (30237573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育・保育支援プラットフォーム / 子どもの成育環境形成 / 子育て支援ネットワークの形成 / 地域文化の継承と創造 / 障害者の地域生活支援 / 園・学校と地域・行政の連係 / 子供の生活体験と運動能力の向上 / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3つの視点をもって教育・保育支援プラットフォームを構築する過程を分析してきた。(1)特別な支援を必要とする当事者とその家族と結んで、行政、医療や福祉などの専門機関、さらには地域住民の地域自治組織やNPOなどが連係してきめ細やかな支援が進められている。具体的には、医療機関と連携した子ども食堂事業の立ち上げ過程や、NPOと医療機関が連携した精神障がい者の地域生活移行支援の取り組み(埼玉県三郷市)について、研究者自身も参与した事例調査を継続して実施した。 また、(2) 安全で安心な地域生活環境を整備し、子どもも大人も学び、生活体験を豊かにする基盤となる生活文化の創造と継承に関わる諸活動についての事例調査を実施した。具体的には、町内会における福祉コミュニティ形成の活動や、住民と行政が一体となった子育て支援活動(川崎市宮前区)を聞き取り調査した。また中山間地におけるNPO法人による森のようちえん保育の活動や、集落における民俗芸能の継承事例(長野県南佐久郡佐久穂町、小海町)や地域の保存会と小学校が連携した事例(川崎市宮前区、愛知県豊田市)、食文化の歴史的形成と継承をめぐる地域住民の取り組み(高知県四万十市、高知市)を調査した。また、島嶼部における学校と地域が一体となった生活体験学習の継続とその子どもへの効果(沖縄県八重山郡竹富町)について調査した。総合的に、プラットフォーム形成の核となる学校運営協議会の取り組み(川崎市宮前区)について参与による事例調査を行ってきた。 さらに(3)東日本大震災の復興過程の事例(宮城県石巻市、仙台市)についてはコミュニティアートによる地域振興の事例を聞き取り調査した。 研究成果の一端は、埼玉県三郷市社会福祉協議会における福祉講演会の講師を務め、またNPO主催による地域医療による精神障害者の生活支援の講演学習会を実施して、社会に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育・保育支援プラットフォームの構築について、2019年度は研究計画に沿って基礎調査をさらに展開するとともに新たな調査事象も加わった。 (1)中山間地の事例として長野県小海町や佐久穂町での調査を継続するとともに、民俗芸能や地域学習による環境保護活動の盛んな島嶼部の学校・行政・地域の連携事例として沖縄県八重山郡竹富町を調査した。いずれの地域においても、それぞれの歴史的・社会的特性をもちながら、住民の文化継承の活動と学校教育とが協働・連係しており、それによって住民相互の結びつきが新たに形成され、深まる事例であり、さらに深く追究する必要がある。 (2)都市部の事例として、川崎市宮前区の学校運営協議会や住民主体で行政が連携した子育て支援活動について、子どもの体験活動の機会や多様な主体の学校への関わりの組織過程を「子どもの人権」保障の視点を基調として調査してきた。 これに加えて、特別な支援を要する子供・若者に対する支援事例として埼玉県三郷市におけるNPO法人により医療機関と連携して展開される活動や、地域住民と医療機関が連携した子ども食堂の事例を取り上げた。これらの諸活動がプラットフォーム形成の核となり得るのか、COVID-19への対応という新たな事態も踏まえつつ調査事項を充実させていく必要がある。 (3)震災復興過程における特別な支援を要する子供・障がい者等への支援のあり方についても石巻市のNPOと連携しながら研究をより深めつつある。 子供や家庭への教育・保育支援プラットフォームの形成の仕組みづくりとともに、地域文化を継承し創造することにより人々が交流しネットワークを形成することは、激動する社会情勢の渦中においてますます重要さを増している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、1月より急速に拡大したCOVID-19の影響で、事例としてきた地域活動の展開が全くペースダウンしている。また、遠方の事例地とは往来がままならない状況となっている。しかしこの3年間の事例調査を継続し、おもに首都圏の事例地を対象として、次の調査研究を行う。 1)聞き取り調査及び参与観察記録を行う。教育・保育プラットフォームの構築を研究の軸として、子供・若者と保護者や支援者の声やエピソード、さらに団体としての活動経過などについて、資料を収集する。また、これまで蓄積した映像資料などの文字起こしや画像分析を行う。 2)当事者の視点や意見を取り込みながら、評価規準を設定する。学校教育と家庭・地域社会が連係して行う事業の場合は、教育的で目的合理的な評価規準をとるが、地域教育や学校運営協議会制度の理念の実現という視点では偶発的な条件も考察をする。一方、特別な支援を要する子供・若者・地域住民については、地域医療事業と連携しながら当事者主体の評価規準も必要となる。具体的な事例について、公的な支援と非公的な支援の両面にわたり、当事者の声を聞きながらその課題を明確にする。調査票調査およびテキスト分析を合わせて実施する。 3)教育・保育プラットフォームの構築の鍵を握るのは、地域住民や保護者が支援者となりコーディネーターとなることである。これを地域教育における養成過程として考察し、先進事例を参照しつつコーディネーター育成の課題を明確にする。 4)島嶼部の事例をさらに追究し、また、都市部と中山間地の交流事例について、長期間にわたる取り組みが地域社会の形成に及ぼす影響についてプラットフォームの形成という視点から調査を深めていく。 5)学会報告を申し出ていた学会大会が、COVID-19感染防止のため現在取りやめとなっている。発表を行う機会があれば参加しつつ研究を集約し、報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
2019年度は、事例調査地として都市部の川崎市宮前区と埼玉県三郷市を中心に参与的事例調査を日常的に実施してきた。一方、体調が昨年同様不安定であったため遠方への出張は体調をみて実施してきた。さらにCOVID-19による移動自粛の事態が発生し、下四半期に高知県と沖縄県への出張を実施したが、いずれも長期にわたる出張ができなかった。そのため、旅費を支出しなかったことが次年度使用額が発生した最大の理由である。そのほか、物品の購入も控えていた。
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