2017 Fiscal Year Research-status Report
障害児保育における「信頼モデル」に基づく個別の指導計画及び保育記録の様式開発
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17K01920
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
吉川 和幸 帝京科学大学, 教育人間科学部, 准教授 (30528188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川田 学 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (80403765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 障害児保育 / 特別支援教育 / 障害のある幼児 / 個別の指導計画 / 子ども理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害のある幼児を、保育環境における能動的な学び手であると捉え、保育への意欲的な参加の姿を積極的に評価していく「『信頼モデル』に基づく『個別の指導計画』及び『保育記録』の様式開発」を目的としている。平成29年度は、以下の2項目を中心に研究を実施した。①個別の指導計画作成の前提となる、障害のある幼児に対する保育者の子ども理解の有り様を明らかにすること、また、研究フィールドの開拓を意図し、幼稚園、認定こども園の保育者を対象に、座談会形式のグループインタビューを実施した。②研究協力園を定期的に訪問し、対象児の選定、および対象児の園での活動の様子について、行動観察および保育者へのインタビューを中心としたデータ収集を実施した。結果の概要は以下の通りである。①グループインタビューにおける、保育者の語りの分析からは、保育者は、障害のある幼児一人ひとりの姿を丁寧に捉え、個に応じた育ちを尊重する姿勢をもつことを基底とするが、同時に実践において、集団生活における他児との関係性を重視した子ども理解を構成していることが示唆された。そして、このような子ども理解を背景に、個別の指導計画の作成、実践の過程において、集団の生活年齢に即したねらいと、障害のある幼児一人ひとりに即したねらいの両立に折り合いをつけることを重視し、時に困難性を抱いていることが示唆された。②園での生活を通して、対象児に対して保育者が設定するねらい及び支援の手立てと、それらに対応する、対象児の園での具体的な姿が、縦断的に示された。①の結果概要については、日本保育学会第71回大会で発表を行った。次年度は②のデータを基に、個別の指導計画および保育記録の様式モデルに関する検討を、実際の保育実践の分析から行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究協力園における対象児の選定に時間を要したため、長期的なスパンで、保育者の子ども理解と保育実践における「問題点モデル」と「信頼モデル」の比較検討を行うことは、次年度の作業となったが、様式作成の基礎資料となる保育者の子ども理解の有り様について、グループインタビュー結果の分析を通して示すことができた。平成30年度は、平成29年度までに得られたデータを基に、研究協力園および対象児の生活の文脈に即した、「信頼モデル」に基づく個別の指導計画および保育記録の様式について試案を立て、実践を通して、その妥当性について検討していきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、以下の3項目を中心とした研究を行う。①選定した対象児を事例として「問題点モデル」及び「信頼モデル」の比較、検討を行う。②個別事例を対象とした実践研究に加えて、様式モデルの汎用化バージョンの作成を行う。③平成29年度と同様に、保育者を対象にした座談会、ワークショップを行い、フィールドの開拓に努めるとともに、本研究の経過報告を行い、得られた知見を地域に発信していく。推進の方策として、①については、研究協力園からの定期的なデータ提供及び概ね1~2ヶ月ごとの研究者訪問により、手厚いデータ収集に努める。②については、前年度の座談会に参加した園と引き続き連携して、短期的な研究を蓄積していく予定である。③については、前年度の研究成果についての冊子作成と配布を行い、研究成果について広く周知を図るとともに、障害のある幼児の個別の指導計画,保育記録の作成に課題意識,研修ニーズのある幼稚園、保育者の声を拾い上げ、引き続きのフィールド開拓を促進していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度については、個別の指導計画および保育記録の実践に伴う、子どもの姿に関する縦断的評価(子ども側評価)に至らなかったため、子ども側評価に関連して、当初計上した予算(410,000円)については、平成30年度に使用することとしたい。また、残り次年度使用額については、人件費として計上していたワークショップ(座談会)の講師料がかからなかったこと(当初40,000円を計上)と、研究協力園における対象児の選定に時間を要したため、「問題点モデル」と「信頼モデル」の比較検討のための、定期的な保育カンファレンスの実施はこれからであり、カンファレンスの録音データのテープ起こし業者依頼費(当初200,000円を計上)が未使用のため、こちらについても平成30年度に使用することとしたい。
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