ベトナム人技能実習生の労働実態と「労働力輸出」による村落社会の変容に関する研究

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K02027
• Research Institution: Osaka City University
• Principal Investigator: 川越 道子 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特別研究員 (70617068)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2020-03-31
• Keywords: 外国人技能実習制度 / 移住労働 / 労働力輸出 / ベトナム / 村落社会 / 工業化 / 環境汚染

Outline of Annual Research Achievements

昨年に引き続き、2018年度は以下の調査を実施した。
１．ベトナム現地調査：2018年3月と8月にベトナムで調査を行った。3月は、帰国した元技能実習生に帰国後の生活について聞き取りをした。さらにハノイ市郊外にある移住労働者の送出し機関を訪問し、渡航前研修を参与観察するとともに、送出しの現状について関係者にインタビューを行った。8月は、主な移住労働者の輩出地の一つであるベトナム北中部のゲアン省を訪れ、2016年に発生した大規模海洋汚染の被害状況、そして同地からの移住労働への動向について聞き取りを行った。
２．ベトナム人技能実習生の生活実態および支援の現状についての国内調査：埼玉、東京、大阪、広島にある日本語教室や外国人労働者支援団体を訪問し、支援の現状と課題について聞き取りを行った。また昨年と同様、開設したベトナム語ウェブサイトを通して、困難な状況にある技能実習生の相談を受け、実態を調査した。
３．他の移住労働先での実態調査：8月、ベトナムからラオスに渡り、ベトナムからの移住労働の実態について移住労働者とベトナム系ラオス人に聞き取りを行った。

以上の調査から、現時点では主に以下の成果が得られた。国内では、一括りにとらえられがちなベトナム人技能実習生だが、ベトナムでの出身地域により移住労働者となる要因や背景が異なること、また現在の送出しシステムが移住労働者自身に大きな経済的負担を強いるものであり、それが渡航後の労働や生活に影響していることが明らかになった。また言葉の壁や正確な情報の不足により、実習生が支援先を探せない状況、および実習生の生活支援をボランティアによって運営される日本語教室や支援団体が担っている現状が確認された。さらに実習生からの相談を通して、移住者のメンタルヘルスについて研究にする必要性が示唆された。これらの成果は国内で開かれた研究会で報告した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

調査はおおむね順調に進展しているが、調査内容が多岐に広がったこと、そして、開設したベトナム語ウェブサイトに寄せられる相談に対応する負担が当初の予測以上に大きかったことから、これまでの調査で得られた資料やデータの整理が行えておらず、論文執筆に至ることができなかった。

Strategy for Future Research Activity

2019年度は、ベトナム人技能実習生を受け入れている産業別の実態調査および日本語教室の活動実態について、北海道、大阪、奈良、広島で調査を実施する予定である。また支援と調査のバランスを再調整しながら、これまでの調査結果を整理、論文にまとめ、また学会や研究会での報告を行う予定である。

Causes of Carryover

国内、海外調査のための時間が確保できず、期間を短縮して調査を実施したため、次年度使用額が発生した。これらの旅費、人件費・謝金は最終年度の調査に充当する予定である。