2017 Fiscal Year Research-status Report
Coastal Resource Management and Natural Disaster Recovery for Empowering Marginalised Communities in the Philippines
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17K02057
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
瀬木 志央 甲南女子大学, 文学部, 講師 (30752729)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 災害復興 / 新自由主義 / 災害便乗型資本主義 / 沿岸資源管理 / 観光開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、被災したフィリピン沿岸コミュニティの海洋保護区とビーチフロント開発に着目し、自然災害と新自由主義的な環境保護の展開について明らかにすることを目的としている。その上で、海洋保護区を軸とした住民のエンパワメントに結びつく沿岸資源管理と災害復興のあり方を提示することを目指している。2013 年にフィリピンにて甚大な被害を与えた、巨大台風ハイヤンにより高波被害を受けた地域を事例に、本研究はポリティカル・エコロジーの視点から、①被災から復興のプロセスとアクターの動向、②自然災害と沿岸資源の利用・管理に関する言説と実践、③より社会正義に配慮した資源管理と復興のあり方の考察をおこなう。 初年度である本年度は、文献調査および2回の現地調査を実施した。第1回目の現地調査は、被災や復興状況に関するデータ収集、ネットワーキング、調査地の選定を目的とし、2017年7~8月に28日間実施した。マニラ首都圏、セブ市、タクロバン市では国際NGOや学術機関の関係者からの聞き取りをおこなった後、東サマール州ギワン町をベースに、現地NGOや漁業水産省の協力を得て、近隣のマニカニ島やマリワリオ島を含めた地域一帯における復興プロセスについて調査した。その後、セブ州のバンタヤン島に位置するサンタフェ町にて、復興プロセスにおける小規模漁民の漁業形態の変化について調査した。第2回目の現地調査は、2018年2月に20日間、引き続きサンタフェ町にて実施した。調査では、復興過程における観光開発の位置づけや土地をめぐる政策変更や利用形態の転換、漁具の流出や破損を契機とした生業転換に焦点を当てたデータ収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度では、資料収集、文献調査、現地調査、データの整理・分析を目的に調査にあたった。年間を通して、図書や論文の収集をおこなったものの、時間的制約から十分な文献調査はおこなえていない。現地調査については、計7週間程度の調査を実施し、数十時間に渡るインタビュー及び参与観察をおこなうことができた。しかし、現地調査で得られた大量のデータは部分的にしか処理できておらず、十分な分析はおこなえていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はサンタフェ町に焦点を当て、復興のための観光開発という言説、またそれを実現していくための土地利用の再構築、生業変化について調査したが、復興プロセスと沿岸資源管理との関連性については調査できてない。これは、サンタフェ町が被災時点で沿岸資源管理の取り組みを積極的におこなってこなかったため、被災経験が人々の資源観や環境保護に対する考え方、資源の利用と管理の実践について調査できなかったためである。次年度以降は、サンタフェ町の調査と並行し、沿岸資源管理に積極的に取り組んできた地域を新たな調査地として選定し、上記の点について調査をおこなっていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、購入予定であったソフトウェア(NVivo)の費用とほぼ同額である。当該助成金は、次年度に本ソフトウェア購入費用として使用する。
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