2017 Fiscal Year Research-status Report
スイスの観光関連税の観点からみた主体的自立型地方観光振興
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17K02119
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Research Institution | Hokkai School of Commerce |
Principal Investigator |
伊藤 昭男 北海商科大学, 商学部, 教授 (00271213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 主体的自立型地方観光振興 / 観光目的地ガバナンス / スイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、主体的自立型地方観光振興を推進しているスイスのゲマインデおよび関係DMOを参考に日本の市町村における今後の主体的自立型地方観光振興の推進について考察することである。本年度は、その端緒研究としてスイスのDMOとの比較の観点から北海道のDMO組織としての観光協会等に関してその問題点・課題を考察した。財源の構成と規模の比較、役員機能の比較、財源と役員機能の関係性(重回帰分析)の比較をアンケート調査からの考察と、データ比較および統計分析を通じて得た主な結論は次のとおりである。1)自立的な財源の創造が重要な課題である、2)ネットワーク能力の高い役員の確保は財源確保の観点から重要な課題である、3)DMO組織の組織強化をもたらす組織変革が重要な課題である、4)DMO組織における専門人材の確保と公民連携の創造は重要な課題である。北海道におけるDMO組織のマネジメント能力を向上させなければならない。さらにそれらの組織は独自の形態、適当な空間規模およびサイズ、望ましい財源構成などを追求すべきである。これらのDMO組織の組織転換を図るとともに、地方観光に関するドラスティックなチャレンジ精神が必要と考えられる。また、観光地ガバナンスの参考事例(スイス、オーストリア、イタリア、オーストラリア、カナダ)に関して文献研究を行った。これより観光目的地は同質のようであってもそのガバナンスは地方の固有性(人種、歴史、政治・制度、社会・経済・文化など)を反映しているため、そのガバナンスは独自のスタイルにならざるを得ないことを知見に、日本における観光目的地ガバナンスの実行においては地方の固有性を十分に見極め、オリジナリティのある推進方法を追求していく必要があるとの示唆を得た。さらに、日本の観光関連税についての動向を情報収集した(宿泊税、国際観光旅行税、入湯税)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スイスのゲマインデおよびDMOにおける観光関連税の実態把握のために予定していた「考察対象事例の選定」が情報収集および文献資料に手間取ったことから、遅れが生じている。想定していた考察対象事例は、Lenzerheide(Vax/Obervazゲマインデの中のVillage,グランビュンデン州北側)、Toggenberg(Nesslau, Wildhaus, Alt St. Johannから成る地域、ザンクト・ガレン州東側)、Saas-Fee(Saastal高地のゲマインデ、ヴァリス州南東側)の3事例であり、このうち、Vax/ObervazゲマインデおよびToggenbergについては現在、関係文献資料を収集中であるが、まだ十分な蓄積とはなっておらず、さらなる収集への努力と収集内容に関する整理・考察が必要である。なお、Saas-Feeに関する文献資料収集はいまだにわずかにとどまっている。こうした事前の予想に対しての遅れは先に記したように関係文献収集の収集方法や実際の収集作業に手間取ったことに多くを起因するが、それに加えて当初予定していたスイスの大学における研究協力者との文献収集に関するコミュニケーションが想定よりもスムーズに進まなかったことも影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、研究を推進する方策としては、当初想定していた考察対象事例を3事例から2事例へと対象を絞ること、またスイスの研究協力者と関係文献資料の収集だけでなく、専門的知識の提供などを含め協力内容の見直しを相談していく予定である。また、「導入済み観光関連税についての行政間の関係考察」についても上記とほぼ同様の理由からやや遅れているが、引き続き関係文献資料の収集および関係考察に向けての作業を関係機関のサイト(連邦政府やカントン(州)のサイト、など)の詳細調査を進めて行く。本年度中には現地調査(考察対象ゲマインデやDMO)および専門家(ザンクト・ガレン大学のProf. Beritelliを予定)へのヒアリングを実施し、情報収集と実態把握に努める予定である。
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Causes of Carryover |
事例調査を含めて関係文献資料調査に手間どったこともあり、文献資料代、研究協力に係る経費、さらにそれらに連動して発生しうる各種消耗品代の支出の使用が当初の見込みより少なく、次年度に持越して使用したい。今後、関係文献資料の収集(取寄せあるいは現地調査時に入手)に要する経費、分析のためのアプリケーション・ソフトに要する経費、研究協力(専門情報の提供など)に要する謝金、各種の消耗品の購入に要する支出、調査に伴う通訳料や翻訳料等の支出を想定している。
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