2018 Fiscal Year Research-status Report
国立公園等の観光資源価値の再評価に関わる霊山の景観特性に関する研究
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17K02134
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小野 良平 立教大学, 観光学部, 教授 (40272439)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 景観 / 自然公園 / 観光資源 / 霊山 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国立公園や国定公園等の自然公園に立地する文化的資源である山岳信仰(霊山)に関わる社寺を対象とし、その立地空間における周辺の自然環境との視覚的繋がり(可視性)を分析し、その景観特性を明らかにし、観光資源としての価値の再評価について考察をすることを目的とし、事例調査を継続した。 平成30年度は、大神山神社・大山寺(鳥取県・大山隠岐国立公園)、高野山(和歌山県・高野竜神国定公園)、関山三社権現(長野県・妙高戸隠連山国立公園)、那智大社・青岸渡寺(和歌山県・吉野熊野国立公園)を対象に、地形データに基づいた社寺の参道、境内地、周辺地などからの可視領域の解析に加えて現地踏査による可視性解析結果の確認作業を実施した。 その結果、大山寺においては社殿の立地および参詣道のルートと大山および海の可視性、高野山においては大門の立地と海の可視性、関山権現においては社殿の立地と妙高山および海の可視性、那智大社においては社殿の立地および参詣道のルートと那智滝および海の可視性、のそれぞれに関連性があることが確認された。 このうち大山に関しては、歴史的に成立した複数の参詣道(坊領道・尾高道・溝口道・横手道・川床道)のそれぞれついて資料にもとづきその推定ルートをGIS上に再現し、各ルートと大山および海(特に弓ヶ浜)の可視性との関係を精査した。特に坊領道・尾高道における山岳と海への視覚的繋がりが明確になり、これが大山信仰における大山寺縁起絵巻(14世紀)にみられるような弓ヶ浜への認識とも関連して理解できること等を考察した。またランドマーク的山岳とは異なり、山岳に囲繞されるような信仰空間においてもその入り口となる大門において海との視覚関係が確保されているようなタイプの景観特性についても把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の方法においては、地形データによる数値解析とその結果の現地踏査による照合の双方が重要であるが、現地踏査における可視性の確認作業は、天候による影響を受けやすい。理想的な条件は見通しの良い晴天であるが、この天候予測を含んだ現地踏査の実施計画が必ずしも容易ではないことが研究がやや遅れていることの主な要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29・30年度に数値解析を実施した対象地のうち、現地踏査が未実施の英彦山(耶馬日田英彦山国定公園)の調査に加え、対象地の候補として、出羽三山神社(磐梯朝日国立公園)、白山比咩神社(白山国立公園)、金比羅宮(瀬戸内海国立公園)、石鎚神社(石鎚国定公園)、霧島神宮(霧島錦江湾国立公園)などの中から選定した追加調査を行う。また引き続き古地図、古絵図、古写真、歴史史料等の調査による過去の景観認識についても各事例対象地について実施し、現況に対する史資料からの検証作業も進める。 その上で最終年度のとりまとめに際し、各霊山においてとらえられた自然環境との視覚的繋がりを、単なる現況としての景観特性に留まらない、歴史性・文化性の中に明確に位置付ける観光資源評価のあり方として総括する。 なお現地踏査の際の天候条件の確保については引き続き課題であるが、十分な事前予測のもとに効率的な調査を実施する。
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Causes of Carryover |
現地踏査が天候条件などにより予定通り実施できず、旅費等において使用が予定を下回ったため次年度使用額が生じた。今年度の旅費として当初計画の旅費に加えて使用する計画である。
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