2017 Fiscal Year Research-status Report
言語の学習と拡張における知覚の役割の解明-後期ウィトゲンシュタインの思索を通じて
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17K02160
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 圭一 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (30535828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウィトゲンシュタイン / 知覚 / 認識論 / アスペクト / メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の本年は、第一に世界についての語りとは異なる体験についての語りが生じるのがどのような地点であるのかを分析した。その結果として、いわゆる経験の透明性が崩れる場面として、経験が不透明になる(たとえば、対象がぼやけて見える)場合とは異なり、経験そのものが透明でありながらも、そこで現われている性質を世界の側に属する対象の側の性質ではなく、経験の側の性質としてみなすという転換が生じる場面があり、それがアスペクト転換に代表されるような他者との判断の不一致が生じる場面であることを明らかにした。 第二に、われわれの言語を拡張するものとしての比喩的な表現について分析し、認知言語学の知見などを援用しながら、ウィトゲンシュタインが取り上げている比喩的表現をアスペクトの転換として捉えなおすことを試みた。そのうえで、通常の概念間のメタファーに関しては、概念的な構造の類似性を見るという点で、知覚経験の比喩的表現に関しては、知覚対象がもつ構造的な特徴の類似性を見るという点で、それぞれ絵画的なアスペクト知覚と類比的であることを明らかにし、それらがどのような意味で概念を拡張させていくことになるのかを分析した。そして、ウィトゲンシュタインが「二次的な意味」と呼んだ「母音eは黄色い」のような一見するとナンセンスに思われる表現はこのような通常の比喩と異なり、類似性を見てとられるべき構造をもたないがゆえにその類似性を説明することができないという点を明らかにしたうえで、意味の体験が言語の拡張において果たす役割について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では本年度は言語の学習における知覚の役割のほうを分析する予定であったが、平行して行っていた言語の拡張における知覚体験の役割に関する研究に関して一定の方向性が見えてきたので、前倒しでそちらの研究を優先させて行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、前年度行う予定であった言語の習得における知覚の役割の研究に戻り、前年度の研究で明らかになったアスペクト知覚の特徴などを踏まえながら、改めて研究していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の前倒しによって、初年度に予定していた言語学習関連の書籍を買わなかったため。次年度では、それらの書籍を購入していく予定。
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