2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the role of perception in learning and expansion of words on the basis of later Wittgenstein's thought
Project/Area Number |
17K02160
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 圭一 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (30535828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 知覚 / 言語 / アスペクト / 人称 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究三年目の最終年となる本年度は、アスペクトの転換における自他の非対称性の分析と、言語習得における知覚の役割についての分析を行った。 前者に関しては、野矢の『心という難問』における知覚論と他者論の分析を行い、野矢の眺望論において排除されている「私」や「あなた」という人称がどのような場面で必要とされるのかを考察した。野矢の議論において、眺望は主体と対象との空間的位置および主体の身体状態によって関数的に定義されるものであるが、「主体の位置」や「身体」の規定において諸感覚を受け取り、体験する主体が必要とされることを明らかにした。さらにアスペクトに相当する「相貌」に関しても、完全に物語を共有している他者とのあいだでも相貌の違いは生じうるのであって、このようないみでの相貌の他者は、認識の他者ではなく、様相の他者であることを明らかにした。 続けて、他者による直示的な教示(指さしによる言葉の教示)によって言語の習得がどのようにして可能となるのかを分析し、そこには対象の見方の変化としてのある種のアスペクトの転換が必要であることを明らかにした。 直示的教示において問題となるのは、指さされている対象がある時点での個体(たとえば、タマ)であるにもかかわらず、その語をそのような限定された個体だけではなく一般的に適用できなくてはならないという点にある。このような仕方での言語習得を可能にするものこそ、指さされた対象を個体としてではなく範例として見るというアスペクト知覚であり、それは、個体のディテールを地として背景に退かせ、一般的な特徴のみを図として浮かび上がらせるような対象の見方にほかならない。このように言語の習得がある種の知覚の仕方の習得でもあるという点を明らかにすることを通じて、言語の習得が文字通りの意味で世界の見方の獲得でもあることを明らかにした。
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Research Products
(4 results)