2019 Fiscal Year Research-status Report
再帰的な自由――論理学生成史の検討によるヘーゲル社会哲学の新解釈
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17K02172
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹島 あゆみ 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (70273951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 社会哲学 / 承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヘーゲル哲学の生成史における承認と自由との発展のプロセスを追いつつ、同時に承認と対極をなす和解概念の展開も視野に入れてヘーゲルの社会哲学の全体像を明らかにし、そこから現代における新たな社会哲学の可能性を展望することである。 具体的には、第一にヘーゲル固有の自由概念(共同的自由)の発展史、承認概念の発展史、和解概念の発展史を三つ組みの歴史として再解釈する。また、第二にこの発展史の背景にはヘーゲル論理学の生成史があると考え、論理学生成史そのものを検討するとともにヘーゲルの社会哲学の発展史との関係を解明する。以上のようなヘーゲル社会哲学の再解釈により、「承認」と「和解」という対立する二つの原理を不可欠の要素として包含しうる社会哲学を構想し、現代の社会を対象としそこでの様々な困難に対峙する新しい社会哲学の形成を目指す。この試みは現代社会の諸問題を考察する上で重要な社会的な意義がある。 2019年度はこの目的に向けて、先行研究においてまだほとんど研究が進んでいないヘーゲルの体系期講義録や手稿類を詳細に検討することを中心として、ヘーゲルの社会哲学の発展を跡づける研究を行った。検討した体系期講義録の一部は翻訳して公開する予定である。さらにここから派生してきた研究として、ヘーゲル哲学の日本での受容について、またヘーゲル哲学と日本思想との比較についての研究も行った。 本年度における研究成果の一部は3件の論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度はヘーゲルの体系期講義録や手稿類を対象とした研究を行ってきたが、その成果の一部を翻訳して公開することになった関係で、翻訳・校正作業に多くの時間をとられてしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の理由により本研究課題の進捗状況がやや遅れているため、事業期間を2020年度まで延長した。2020年度は本研究課題を総括する年度と位置づけ、承認論の発展史をヘーゲル論理学の生成史と関係づけて考察するとともに、新たな社会哲学を展望する。そのためヘーゲルの体系期講義録や手稿類を対象とした研究を行う。2020年度中には本研究課題の成果を取りまとめた著書を完成し、2021年度中の公刊を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度の研究の進捗がやや遅れているために、研究の総括のために予定していた金額を使用するに至らなかった。事業期間を1年延長して2020年度に完了することとしたため、この金額は研究の総括のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)