2021 Fiscal Year Annual Research Report
The Origin of Christianity: from the perspective of the reception history of Matthew's Gospel in early Christianity
Project/Area Number |
17K02240
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
澤村 雅史 広島女学院大学, 共通教育部門, 教授 (50549326)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マタイ福音書 / イグナティオスの手紙 / 受容 / 初期キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度末に行った研究発表をもとに、当日の質疑応答を踏まえて論文として執筆し、本研究の最終成果として発表した。 本研究全体が目標としたのは、新約聖書・マタイによる福音書の使徒教父文書における受容史を扱うことにより、キリスト教という宗教の起源についての学術的な探求に寄与することである。当初は使徒教父全体を網羅的に研究することを目指したが、研究を進める中でイグナティオスの手紙に焦点をあてることで「キリスト教の起源」という問いにより効果的な接近が可能であることを見出した。そして、イグナティオスの手紙におけるマタイ福音書「受容」に見られる両者の「近さ」と「隔たり」という矛盾要素の解明が重要なカギとなることを見出した。そして、初期ユダヤ教⇒マタイ共同体⇒イグナティオス共同体の分化プロセスはすなわち「ユダヤ教」・「ユダヤ人キリスト者」・「キリスト教」の相互形成的成立過程を示しており、そこでは両者の内的必然とともにローマ帝国による対ユダヤ政策の変遷が外圧として決定的な契機となったことを先行研究を踏まえて明らかにした。 コロナ禍の影響で研究計画は大きな変更を強いられ、とくに最終的な成果発表を予定していた国際学会が中止となり、その機会が失われたことは残念である。しかし研究の途中経過は国内および国際的学会で発表することができており、最終成果についても前述のとおり国内の学会で発表後、論文として公開した。 本研究は、「ユダヤ教」からの「キリスト教」の分化という線形的発達史モデルを乗り越え、ユダヤ教に対するキリスト教の優位性を弁証しようとする神学的立場の根本的限界を明らかにすることで、宗教間対話の発展を促し、人類の文明の発展に僅かなりとも寄与することを志したが、当初の目的をある程度達成することができたと考える。
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Research Products
(1 results)