2019 Fiscal Year Annual Research Report
US Cultural Propaganda during WWII in Anticipation of Cultural Cold War
Project/Area Number |
17K02279
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
福中 冬子 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (80591130)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化プロパガンダ / 芸術音楽 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国戦争情報局United States Office of War Information(1942年から45年)による非軍事的広報・情報操作活動の一環として起案・実施された、ヨーロッパおよびアジアを対象とする音楽関係プログラムの内容を精査し、その内容が冷戦期初期(1944年から1968年)に米国国務省および中央情報局が親ソ西側諸国の「教養人」を対象として実施した反ソ・反共産主義文化プロパガンダ活動における音楽関係プログラム構築においてどのように機能したか、その関係性の詳細を検証するものである。本研究者は、①米国公文書館National Arcives IIおよび②米国議会図書館における関連資料の検証を行った。当初、①における調査は、米国戦争情報局関連の資料のみを対象としていたが、現地で調査を始めるにつれ、加えて国務省文化広報部音楽部門も中南米諸国を始めとする海外向けの音楽プロパガンダ策定に携わっていたこと、そして戦時情報局が米国緊急時管理局情報部 や米国伝報(統計)局など、大きく異なる機能を持つ部署の統合によって誕生したがゆえに、内部組織や指示伝達系統が非常に複雑なことなどを知った。それを受け、本研究では、①米国内における、士気喚起機能をもつものとしてのラジオを中心とした芸術音楽プログラム、および②海外における、米国人音楽家、音楽学者と通じた啓蒙プログラムに焦点をしぼり、関連する作曲家、音楽家の資料の議会図書館での調査を含め、検証射程を再設定した。 結果としては、特定の数名の作曲家(コープランド、ハリスなど)が中心的役割を担ったこと、他方で、クラシック音楽よりミュージカルなどのより大衆的な音楽の利用が度々論議されたこと、それらから培われたノウハウが、戦後冷戦期の文化プログラムにも大いに活用されたことが発見された。
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