2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02293
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
配川 美加 日本女子大学, 文学部, 研究員 (10787344)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高桑 いづみ 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 特任研究員 (60249919)
坂本 清恵 日本女子大学, 文学部, 教授 (50169588)
星野 厚子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 客員研究員 (90727182)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 長唄 / 能 / 長唄のアクセント / 安宅 / 隈取安宅松 / 勧進帳 / 延年の舞 / 南部藩 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長唄の旋律形成の特徴を、能楽の影響(詞章・謡・囃子)、及びアクセントや音声に注目してまとめ、成立年代や作曲者の特徴も明らかにすることを目的とする。 2019年度は、能『安宅』と、長唄『隈取安宅松』及び『勧進帳』を取り上げ、「長唄『隈取安宅松』『勧進帳』の成立」「能の道行」「謡を取り込んだ長唄の音声」「弁慶の舞」の観点で影響関係を明らかにした。そして、その結果を2020年3月9日、日本女子大学文学部・文学研究科学術交流企画シンポジウム「能『安宅』と長唄『隈取安宅松』『勧進帳』」で、能や長唄の実演も交えて報告する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止となり、次年度、状況が落ち着いたところで改めて報告することとなった。 また、能楽の影響を受けて長唄『石橋』『鶴亀』などを作曲した10世杵屋六左衛門や、その養子で長唄『枕慈童』『紀州道成寺』などを作曲した11世杵屋六左衛門を後援した南部藩の音楽事情を調べるため、2019年9月2日・3日、岩手県盛岡市「もりおか歴史文化館」にて、南部藩の記録『御在府留』『御側雑書』『覚書』などを調査・撮影した。南部藩には藩主を中心とする能楽愛好集団が形成されていたことが、青柳有利子『南部藩の能楽』などで報告されているが、長唄に関わる内容を南部藩の記録で確認することは難しい。しかし、能楽などの音楽事情を知ることはできた。南部藩の記録の量は膨大なので、2020年度も引き続き、撮影した資料の読解などを進めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
能楽の影響については、これまでに能『石橋』と長唄の石橋物『相生獅子』『英執着獅子』『石橋』など、また能『安宅』と長唄の『隈取安宅松』『勧進帳』などを取り上げ、詞章・謡・囃子や音声面での影響関係を調べてきた。また、アクセントについては、唄と三味線に分けて、上方アクセントと江戸のアクセントがそれぞれの旋律にどのように反映されているかを、長唄『英執着獅子』『越後獅子』などで調べ、多くの楽譜や音源に当たることで、演奏者によっても違いがあることを確認した。2019年度に提出した論文「アクセントからみた長唄《英執着獅子》と《越後獅子》」はその成果をまとめたものである。主に成立年代の古い曲から取り上げてきたので、2020年度は明治期の長唄『船弁慶』『葵の上』などを取り上げ、時代を近代にまで広げて結論を導きたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は明治期の長唄『船弁慶』『葵の上』などを取り上げて、これまでと同じ方法で能楽の詞章・謡・囃子や音声面での影響関係を調べ、長唄全体の旋律形成の特徴をまとめたい。そのためには、正本や楽譜、音源などのさらなる整備が必要となるので、長崎県平戸市にある松浦史料博物館で正本の調査を行い、『葵の上』などが収録されている桜井譜のデジタル化、SPレコードのデジタル化などを行う必要がある。また、長唄の伝承の様相を知るため、江戸期の一節切の楽譜『糸竹古今集』『糸竹五色貝』に収録された長唄を五線譜化し、演奏家からの聴取も行う。 さらに、本研究の成果を活かして、『糸竹五色貝』に収録された長唄『天人羽衣』の復曲演奏を試みたい。『天人羽衣』は延享2年(1745)6月中村座で初代瀬川菊之丞が踊ったとされ、能『羽衣』に基づき、歌詞には狂言の小舞謡『七つ子』も取り入れ、同じ菊之丞が踊った《相生獅子》など本研究で取り上げた石橋物ともかかわりがある。近代まで伝承されたため部分的には僅かに残っているが、曲全体は失われている。その復曲を、能楽の影響・アクセントや音声の研究成果も十分に取り入れて試み、演奏を講演・演奏会の形で公開し、併せて報告書の作成も行う予定である。
|
Causes of Carryover |
なぜならば、当該年度の令和2年2月、長崎県平戸市にある松浦史料博物館において長唄正本を中心とする調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の状況に伴い実行できなかったため。従ってその金額は、今後の研究の推進方策にも記したように、令和2年度、松浦史料博物館の調査に充てる予定である。
|
Research Products
(4 results)