2022 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary research on melody formation in nagauta
Project/Area Number |
17K02293
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
配川 美加 日本女子大学, 文学部, 研究員 (10787344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高桑 いづみ 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60249919)
坂本 清恵 日本女子大学, 文学部, 教授 (50169588)
星野 厚子 東京大学, 文書館, 学術専門職員 (90727182)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 長唄 / 旋律 / 能楽 / アクセント / 音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世に歌舞伎音楽として成立した長唄の旋律には、中世に成立した能や日本語のアクセントなどがどこまで反映されているのか、また、現在の伝承はどこまで遡れるのか。こうした問題を明らかにするため、異なる分野の研究者が集まって活動を行った。その成果は、2023年3月『長唄の伝承』として檜書店から刊行された。 能の影響については、高桑が、能〈石橋〉の囃子「獅子」のうち、長唄の「クルイ」合方に取り入れたと従来言われていた部分とは異なる箇所が摂取されたことを推定した。また、能の大ノリ謡を摂取した長唄には、当時の古い近古式地拍子が残っていることを具体例で示した。さらに、坂本は《京鹿子娘道成寺》などを取り上げて、長唄は能の中世的な発音(入声音の発音・ウ段長音を割る発音・音便など)を取り入れていないことを明らかにした。 アクセントの反映については、坂本が、上方の役者が江戸で初演した《英執着獅子》のうち、初演から変らないと考えられる三味線の旋律には京阪式アクセントの反映が見られるが、唄の旋律は時代とともに徐々に東京アクセントに変ったこと、江戸で初演された《越後獅子》については三味線の旋律にも東京アクセントを反映するものがあることを示した。 現在の伝承については、長唄の譜を所収する文政期に成立した一節切譜『糸竹古今集』『糸竹五色貝』の概要を高桑と配川がまとめ、そのうち《傾城道成寺》など4曲を五線譜化して、当時の旋律と現行の伝承には大きな違いがないことを明らかにした。そのうち《鷺娘》については、配川が初演正本などの考察も交えて伝承の確かさを述べた。また、長唄三味線方で人間国宝の今藤政太郎師から、長唄の伝承曲を中心に話を伺い、「今藤政太郎師聞書」としてまとめた。 このほか、長唄の譜本のうち、実態のわからなかった桜井譜の概要を星野が整理し、配川が《越後獅子》などの旋律形成に与えた河東節などの影響を考察した。
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Research Products
(3 results)