2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Transition of Islamic Plays and the Political and Cultural Thrusts in Early Modern England
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17K02532
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Research Institution | Morioka Junior College,Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
石橋 敬太郎 岩手県立大学盛岡短期大学部, その他部局等, 教授 (80212918)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 独占貿易 / 海賊行為 / 改宗 / トルコ / ジェイムズ一世の宗教政策 / イスラム演劇作品 |
Outline of Annual Research Achievements |
1603年にイングランドの王位に就いたジェイムズ一世は、翌年の夏にロンドン協定を締結し、スペインとの和平を回復した。この和平協定によって、ジェイムズは、海上貿易を推進する政策を行った。その際に、ジェイムズは、イングランド及びヨーロッパ諸国の海上貿易の妨げとなっていたトルコの海賊行為に悩まされる。この海賊行為にはイスラム教徒に改宗したイングランド人も深く関与しており、事態の解決が急務とされた。このような時期に執筆・上演されたのが、海賊行為と改宗を主題とするロバート・ダボーン作『トルコ人と化したキリスト教徒』(1612年頃執筆)とフィリップ・マッシンジャー作『背教者』(1634年頃執筆)であった。 ダボーンの『トルコ人と化したキリスト教徒』では、トルコの貿易港テュニスを拠点として、当地の支配者や商取引の仲介者であるユダヤ人がイスラム教への改宗によってイングランド人海賊ジョン・ウォードを取り込み、莫大な利益を上げる貿易コミュニティが描かれる。このような貿易コミュニティが描出された背景には、国王から独占権を与えられた東インド会社など特権会社によって排除された貿易商人たちが、国家から干渉されない自由貿易体制を訴えていた現実を映し出していることを明らかにした。 マッシンジャーの『背教者』においては、イエズス会士フランシスコがイスラム教に改宗した海賊グリマルディを改心させたほか、平信徒のヴェネツィア人紳士ヴィテリがトルコ王女ドヌーサをキリスト教徒に改宗させる場面が描出される。このような場面が舞台化された背景には、ヨーロッパにおけるトルコの勢力拡大を阻止するために、サクラメントによって人間の罪が許され、神の恩寵を受けるという教義がプロテスタントとカトリックの双方に認めあれると主張し、両派を統一したキリスト教国を再構築しようとするジェイムズ一世の宗教政策があったことを指摘した。
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Research Products
(4 results)