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2018 Fiscal Year Research-status Report

語られぬ収容所の集団的記憶を再生する日系アメリカ作家のポスト・メモリーの可能性

Research Project

Project/Area Number 17K02562
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

牧野 理英  日本大学, 商学部, 教授 (10459852)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywordsアメリカ文学 / 日系アメリカ人 / ポストメモリー / 収容所 / 第二次世界大戦
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、第二次世界大戦中強制収容所で過ごした日系アメリカ人を親にもつ作家が、親の語らない収容所の集団的記憶をどのように当時の手紙や写真 などで再生し、自身の作品に投射していったかというポスト・メモリ―の過程を考察するというものである。そしてその歴史の再生過程において、日系作家が迫害に対するプロテストとは異なったナラティブを創出していることを証明する。例えば日系アメリカ作家カレン・テイ・ヤマシタの作品において、その収容所に関するナラティブは、アメリカ社会における声なきサバルタンといったものではなく、むしろ植民地主義的、帝国主義的な要素を顕在化させている。以上の点に着目し、新しい日系表象の可能性を追求し、アメリカ文学研究に一石を投ずるというものである。
本年度の実績に関しては、翻訳が一つ、書評が一つ、研究発表が3つという結果になった。翻訳に関してはハワイの日系アメリカ作家ジュリエット・コーノの『ヒロに降る雨』で、書評はアジア系アメリカ文学理論家のElda E. Tsouの、Unquiet Tropesに関する英文の長評、学会発表は、日本アメリカ文学会九州支部では、ヤマシタの最新作Letters to Memory をベースにした作品論を、そして日本アメリカ文学会関西支部ではメルヴィルのバートルビーとヒサエ・ヤマモトの「エスキモーとの出会い」との関連性を発表した。2019年2月24日の成蹊大学での公開講演では日系アメリカ作家ワカコ・ヤマウチと南部作家テネシー・ウィリアムズの作品から敗北の共振を共通項に、そこから創出されるナラティブにに関して発表した。
前年度と比べると学会発表でのシンポジウムの依頼が多く、それをどのように自分の研究書のテーマ『シマをめぐる日系性の共振』につなげていくかが主な課題となる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

今回は依頼としてシンポジウムを組まされることが多く、発表がメインの成果になった。しかし結果的にそれらの原稿を集大成にして今後著書として出版することを考えると、非常に重要なプロセスであったと思われる。確かに発表のために時間をとられ、それを文字化する時間がなかったことは認めるが、次年度での共著依頼がきており、これらすべてが著書として出版される予定になっている。これらのことも含め、迅速に研究書発行に向けて計画を推進する必要性を感じた。
本年度は口頭発表の依頼が続いたため、なかなか活字化する時間がなかったが、今後はまとめて何本か論文を出版することになる。進歩状況の遅れはそこで取り返すように尽力する。

Strategy for Future Research Activity

今後は、なるべく早く単著を作成しなくてはならない。すでに雑誌や共著などで10本以上の日本語論文を書いているため、それを集め、編集し、さらに書下ろしなどもいれて下書きを今年終わりまでに完成する予定である。研究書のタイトルは『シマをめぐる日系性の共振:英語圏日系文学の新しいエスニック・ナラティブを巡って』(仮)にする予定である。
来年度にはまとまった時間をとることが可能であるため、今まで活字化した論文をまとめ、章立てをし、夏休み前までには下書きを出版社に送る。
研究計画の大幅な変更はいまのところないが、8月以降米カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ハワイ大学マノア校に出向き、教授陣との面会なども充実させ、所属学会等にも出席していただくことにする。彼らの発表を文字化し、ジャーナルに掲載することにより、本研究の集大成でもある研究書出版にも連関させることにする。

Causes of Carryover

本年度は本務校の業務等で海外出張に出る機会が与えられず、旅費等は全く使用することがなかった。したがって来年度にこの費用を当てることにする。
現在次年度に考えている渡航先はアメリカではカリフォルニア大学ロサンゼルス校、ハワイ大学マノア校、そしてワシントンDCにある国立国会図書館、ブラジルではサンパウロ州立大学、カナダではトロント大学を考えている。これらは本研究で扱った作家にかかわる国や、本研究を対象としている研究者がいる場所である。
また北アメリカのみならず、アジアの大学の研究者との連帯も考慮にいれ、韓国、中国、フィリピンといった本研究対象となる国への出張も視野にいれている。

  • Research Products

    (5 results)

All 2019 2018

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 2 results)

  • [Journal Article] Book Review Elda E. Tsou, Unquiet Tropes: Form, Race, and Asian American Literature2019

    • Author(s)
      Rie Makino
    • Journal Title

      Studies in English Literature

      Volume: 60 Pages: 85-90

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] ジュリエット・コーノ ヒロに降る雨  翻訳2018

    • Author(s)
      牧野理英
    • Journal Title

      三田文学

      Volume: 97 Pages: 220-252

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 異国、収容所、文化人類学ー Letters to Memory(2017)に至るまでの カレン・テイ・ヤマシタのエスニックナラティブ2018

    • Author(s)
      牧野理英
    • Organizer
      第63回 日本アメリカ文学会九州支部
    • Invited
  • [Presentation] 「日系アメリカ文学におけるバートルビー的笑いーベルグソンをめぐって」 シンポジウム 「アメリカ文学における戦略としての笑いースラップスティック、オートマティズム、キャンプ、ポストアイロニー」2018

    • Author(s)
      牧野理英
    • Organizer
      第62回 日本アメリカ文学会 関西支部大会
  • [Presentation] 「シマ」をめぐる日系アメリカと南部、そしてその敗北の共振ー ワカコ・ヤマウチとテネシー・ウィリアムズ2018

    • Author(s)
      牧野理英
    • Organizer
      科学研究費・基盤研究(B): 「メイフラワー・コンパクトにおける「排除/包括の理論」と環大西洋文化の再定位」
    • Invited

URL: 

Published: 2019-12-27  

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