2018 Fiscal Year Research-status Report
20世紀後半のフランス文学におけるワーグナーの影響とその超克
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17K02587
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三ツ堀 広一郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (40434245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヌーヴォー・ロマン / アラン・ロブ=グリエ / ジュリアン・グラック / ワーグナー / フィリップ・ソレルス / オペラ / 引用 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究成果にもとづき、《ヌーヴォー・ロマン》の旗手アラン・ロブ=グリエの創作がワーグナーの楽劇と持ちうる接点を、いっそう広い視野から究明することに意を注いだ。同時に、ジュリアン・グラックにおけるワーグナーの受容の意味を掘り下げるべく、オペラ、音楽、祭儀、宗教といった観点から関連文献の読解と分析をおこなった。そのため3月中旬に、パリのフランス国立図書館等で文献資料の調査・閲覧を実施した。また、本研究課題において鍵となるロブ=グリエの自伝的小説『アンジェリックあるいは蠱惑』の邦訳書刊行を視野に入れ、翻訳を進めた。 前年度に発表した研究論文「アラン・ロブ=グリエ《ロマネスク》三部作におけるワーグナーの引用をめぐって」を、「引用およびリライトの歴史」という観点から改稿し(「鏡の書法、あるいはヌーヴォー・ロマン的リライトの機制」)、論集『引用の文学史――フランス中世から二〇世紀文学におけるリライトの歴史』(水声社、2019年2月発行)に収めた。また、ロブ=グリエ、グラックらについての証言を含むフィリップ・ソレルスの自伝『本当の小説 回想録』(水声社、21019年3月発行)を翻訳刊行した。本書は、20世紀後半のフランス文学に大きな足跡を残した前衛作家の視点から、20世紀後半のフランスの文化・社会・政治的状況をあとづけたものであり、フランスの作家たちのワーグナー受容を思想史の観点からも考察しようとする本研究課題にとっても重要な文献である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パリのフランス国立図書館等で文献資料の調査・閲覧を実施したのが年度末の3月だったため、その成果をまとめて研究論文の形で年度内に公表することができなかった。文献資料の精緻な読解という基礎作業に予想以上の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果にもとづいて、ロブ=グリエのワーグナー受容のあり方に、レヴィ=ストロース、ジュリアン・グラックといったワグネリアンのそれとの比較から光を当てなおしてゆく。そのさい、思想史的な観点を捨象しないように心がけたい。そうした観点は、個別研究をいっそう大きなパースペクティヴに位置づけなおすために不可欠だと考える。
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Causes of Carryover |
物品費として購入した図書資料の支出額が、予期していたより若干少なかった。 次年度に、新たに図書資料の購入にあてる予定である。
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[Book] 引用の文学史2019
Author(s)
篠田勝英、海老根龍介、辻川慶子(編)
Total Pages
384
Publisher
水声社
ISBN
978-4-8010-0394-1
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[Book] 本当の小説 回想録2019
Author(s)
フィリップ・ソレルス(著)、三ツ堀広一郎(訳)
Total Pages
344
Publisher
水声社
ISBN
978-4-8010-0408-5