2020 Fiscal Year Research-status Report
20世紀後半のフランス文学におけるワーグナーの影響とその超克
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17K02587
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三ツ堀 広一郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (40434245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジュリアン・グラック / 第二次世界大戦 / ワーグナー / アラン・ロブ=グリエ / ミシェル・ビュトール / オペラ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナ感染拡大のために海外での文献調査が実施できず、本研究課題に関わる文献の収集整理や解読作業は停滞した。かわりに前年度発表の研究論文「ジュリアン・グラックと敗者の想像力――敗戦文学としての『森のバルコニー』」の延長線上で、第二次世界大戦とフランス戦後文学の関係というパースペクティブのなかに本研究課題を位置づけ直すための基礎的な調査と研究を進めた。この主題に関する研究書、とくに社会学的な方法論に依拠したジゼル・シャピロやアンヌ・シモナンなどの研究書を通じて、戦後の文学場の形成と第二次大戦およびアルジェリア戦争の関係について巨視的な視点を得られたのは、今後の研究の進展にとっては収穫と言える。 また一方で、ワーグナーに関係するアラン・ロブ=グリエの自伝的作品の翻訳を進行させたほか、20世紀後半を代表する前衛的作家ミシェル・ビュトールの評論を翻訳・刊行した。翻訳の作業を通じて、ビュトールが作曲家アンリ・プースールと共作した前衛的オペラ《あなたのファウスト》の存在を知り、オペラや音楽に関わるビュトールの発言や評論を読んだことは、本研究課題に思わぬ広がりを与えることになった。たしかにビュトールは、ワーグナーに直接言及することはめったにないが、実験的オペラの構想と制作にワーグナーの残響を認めることは可能だろうし、作家論や音楽論のなかには、フランス文学におけるワーグナーの影響を考えるうえで参考になるような指摘も見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染拡大のために海外での文献調査が実施できず、本研究課題に関わる文献の収集整理や解読作業が停滞した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果の延長線上で、第二次世界大戦とフランス戦後文学の関係というパースペクティブのなかに本研究課題を位置づけ直すための基本的な調査と研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大により、予定していたフランスでの現地調査・文献資料調査を実施できなかった。この調査は次年度に実施したいが、海外渡航の見通しは立てられない。
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