2021 Fiscal Year Research-status Report
20世紀後半のフランス文学におけるワーグナーの影響とその超克
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17K02587
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三ツ堀 広一郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40434245)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジュリアン・グラック / 第二次世界大戦 / ワーグナー / アラン・ロブ=グリエ / ミシェル・ビュトール / 引用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も、新型コロナ感染防止のため海外渡航が制限され、予定していた海外での現地調査・文献調査が実施できなかった。そのため、本研究課題に関わる文献の収集整理や解読作業が停滞した。かわりに前年度に引き続き、第二次世界大戦とフランス戦後文学の関係というパースペクティブのなかに本研究課題を位置づけ直すための研究を進めた。この主題に関する研究書、とくに社会学的な方法論に依拠したジゼル・シャピロやアンヌ・シモナンなどの研究書を通じて、戦後の文学場の形成と第二次大戦およびアルジェリア戦争の関係についての知見を蓄積できたのは、今後の研究の進展にとっては収穫と言える。とりわけ、本研究課題で扱っているジュリアン・グラック、アラン・ロブ=グリエの両者がみずからに対置したカミュ、サルトル、マルローらの戦後の立ち位置について考察できたことは大きい。 一方で、20世紀後半を代表する前衛的作家ミシェル・ビュトールの批評的エッセーについて研究発表をおこなったほか、そのシャトーブリアン論を翻訳・刊行した。ビュトールの批評的エッセーを特徴づけるのは物語性であると言えるが、その物語性は、おびただしい引用から引き出されている。他者のテクストからの引用を自分のテクストに溶かし込みながら物語を紡いでゆくビュトールの批評の作法は、グラックやロブ=グリエの引用の作法とも通じるものである。たしかにビュトールのエッセーは、ワーグナーの影響ということとは直接の関係はないものの、他者のテクストとともに物語を書く姿勢は、ワーグナーとともに書くグラックやロブ=グリエの姿勢をも照射し、ワーグナー作品の引用のあり方を考察するにあたって、示唆するところ大であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナ感染防止のため海外渡航が制限され、予定していた海外での現地調査・文献調査が実施できなかった。そのため、本研究課題に関わる文献の収集整理や解読作業が停滞した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果の延長線上で、第二次世界大戦とフランス戦後文学の関係というパースペクティブのなかに本研究課題を位置づけ直すための研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染防止のため海外渡航が制限され、予定していたフランスでの現地調査・文献資料調査を実施できなかった。この調査は次年度に実施したい。
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