2019 Fiscal Year Annual Research Report
Linguistic Norms and the Literary Theory in Renaissance Italy
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17K02614
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村瀬 有司 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10324873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 惠 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (90175927)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イタリア詩 / ルネサンスイタリア / トルクァート・タッソ / ピエトロ・ベンボ / 俗語論 / 叙事詩の直接話法 / 詩論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究責任者の村瀬はルネサンス期イタリアの代表的な英雄詩三作品の比較検証を進め、2019年度はトルクァート・タッソの『エルサレム解放』の直接話法の形式について研究成果をまとめた。通常イタリアの物語詩の定型である八行詩節においては、直接話法は連の奇数行から始まり偶数行で終わる。一方でこの配置から外れた直接話法も一定の割合で存在する。タッソの叙事詩の場合、台詞のイレギュラーな配置はしばしば特殊な効果を意図している。本研究の最終年度においては『エルサレム解放』の直接話法の研究の締めくくりとして、イレギュラーな配置のなかから特に偶数行を起点とする台詞を取り上げて、その冒頭部の形態と効果を分析した。さらにルネサンス期イタリアの詩論と芸術観について情報発信に努めるべく、タッソの英雄詩の創作理論書『詩作論』を全訳し、これに平易な解説を付して刊行した。 研究分担者の天野は和訳の完了したベンボの『俗語論』第三巻について、前年度に招へいしたペルージャ大学の Pulsoni 教授から情報提供を受けつつ手稿 Vaticano Latino 3210 およびP (Tacuino 1525), M (Marcolini 1538), T (Torrentino 1549) という三種の刊本間の異同を表示する資料の整備を進めた。それぞれに詳細な註を備えた原テキストと和訳を6種のフォント・カラーと3種のアンダーラインによって示すことにより著者の思考の変遷をたどることまでを可能ならしめる高度な研究用資料である。手稿そのものは既にバチカン図書館がNTTの協力の下に精細な写真を公開しており、本研究も一応の完成を見た暁には、公益財団法人日本イタリア会館の協力の下、資料をネット上に公開して国内のみならず広く全世界の研究者に資するものとする可能性を検討している。
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Research Products
(2 results)