2021 Fiscal Year Research-status Report
スペイン語圏における俳句受容プロセスの深化と歳時記編纂についての研究
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17K02667
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
井尻 香代子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (70232353)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宗教暦 / 農事暦 / 地理的相違点 / 生活文化的共通点 / スペイン語圏 / 歳時記データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
スペイン語圏の現地調査およびオンライン調査によって収集してきたデータの整理を継続して実施した。その概要は主に次の2点に分けられる。 まず、「季語・季題に関する研究資料」の整理である。これまでに収集した研究書・雑誌記事・アンソロジー序文などの出版物、学会発表の記録などから、次第に深まっている季語・季題への理解・考察の分析・整理を進めている。 次に、「作品中の季語」の分類・整理である。スペイン語圏はヨーロッパからラテンアメリカまで広範囲にわたるので、地理(地形・気候・生態系・産業)においては多様性が際立つ一方、人々の生活文化(言語・宗教暦・農事暦・行事・食物)においては共通点も多い。スペインでは、アルバセテ(カスティーリャ・ラ・マンチャ州・中央高原台地)、マドリード(マドリード州・中央高原台地)、バルセロナ(カタルーニャ州・地中海岸)、パンプローナ(ナバラ州・北東部山地)、サンティアゴ・デ・コンポステーラ(ガリシア州・北西部)での資料・活動状況を収集し、アルゼンチンでは、ブエノスアイレス(ブエノスアイレス州・北東部ラ・プラタ河岸)、サルタ(サルタ州・北部山地)、トゥクマン(トゥクマン州・北部山地)において資料・活動状況を調査してきた。これまでの資料分析により浮かび上がった地理的相違点と生活文化的共通点により、日本の歳時記と同様の分類が可能であるとの見通しが得られた。今後は「季節に関わる言葉」および「生活文化と季節との関わり」という二つの軸を中心に、スペイン語圏の歳時記研究が一層深められると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度 アルゼンチンのブエノスアイレス、サルタ、トゥクマンにおいて収集した資料から季節感を表現する例を抽出した。 2018年度 スペインのバルセロナ、アルバセテ、マドリードにおいて、主に近代主義以降の詩作品における季節や自然の事物に関する表現を収集した。 2019年度 スペインのガリシア地方とバスク地方において実施したハイク作品集やインタビュー調査から季節感を含んだ自然描写の例を集めた。 2020年度および2021年度 これまでの調査により集積された文献・情報等のデータを見直し、メール交換や連携研究者による資料提供を加えて分析を進めた。そのような作業の中で、地理的多様性と生活文化の共通性に着目し、季語・季題研究を超えた歳時記研究の深まりを実感している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、主として2019年度までに収集した現地調査資料をベースに、現地の連携研究者の協力により提供されている文献・情報を加えながら、2020年度以降進めてきた「季語・季題に関する研究資料」の分析および「作品中の季語」の分類を完成する予定である。これによって「スペイン語歳時記」編纂のデータベースを整備し、スペイン語圏への俳句受容とスペイン語ハイク実作普及によって変容してきたスペイン語圏の人々の自然観について考察をまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大による教育・研究環境の変化、学生対応や大学行政に関わる作業の増加により、本来であれば既に完成予定であったスペイン語歳時記編纂の基盤となるデータベースの整備が道半ばである。また、スペインやアルゼンチンの連携研究者の活動も、現地の教育・研究活動のひっ迫により十全になされていない。これに加え、研究代表者は上記のような緊急事態下の学部運営にも取り組むこととなり、研究推進に充分な時間を確保することができなかった。 2022年3月末で任期も終了し、今後は研究に向けるエフォートを確保することができるため、集積してきた情報・資料の分析・整理に取り組み、データベース構築の完成を予定している。また、諸学会はまだオンライン開催であっても確実に実施軌道に乗っており、研究成果を発表や論文の形で公刊したい。そのため、学会参加費、通信費、物品費(コンピューター周辺機器・書籍)として残額を使用する予定を立てている。
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Research Products
(2 results)