2018 Fiscal Year Research-status Report
微視的類型論によるパラレル・コーパスを利用したバルト海周辺諸語の不定人称文の研究
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17K02680
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐久間 淳一 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60260585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40313621)
當野 能之 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (50587855)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不定人称文 / パラレル・コーパス / フィンランド語 / アイスランド語 / スウェーデン語 / リトアニア語 / ロシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に作成した『星の王子さま』のパラレル・コーパスを用いて、各言語における不定人称文についての考察、および言語間の比較を行った。いくつかの言語については、今年度新たに、当該言語によるテクストを電子化した。対象とした言語は、フィンランド語、エストニア語、アイスランド語、フェーロー語、スウェーデン語、デンマーク語、リトアニア語、ロシア語で、比較対象としてフランス語、英語にも言及した。 本年度の考察では、特に、フランス語原文における不定人称代名詞onに着目し、それが各言語でどのように表現されているかを考察した。その結果、アイスランド語とフェーロー語の場合、前者においては不定代名詞的用法のmathur「人、男」の単数形および複数形を用いた構文が多いのに対し、後者ではtu「あなた」による構文が多く、不変化詞man「人」を用いた構文も存在することが明らかになった。また、スウェーデン語、デンマーク語の場合は、概ねman-constructionで翻訳されていて、両言語の用法に大きな違いは見られなかった。他方、フィンランド語やエストニア語、リトアニア語やロシア語には、そもそもman-constructionが存在しないため、フランス語のonに対応する表現は多岐にわたる。しかし、多岐にわたる中でも、man-constructionに機能的に類似した複数の構文が使い分けられており、各種構文を検討することによって、フランス語では同じonで表されている名詞類の意味機能について、考察を深めることができた。また、各言語の考察結果を持ち寄り、ヨーロッパ諸語の不定人称文を扱った先行研究で提案されている意味地図上にマッピングすることで、各言語の異同の解明を試みるとともに、当該の名詞類の意味機能についても、複数の言語の観点から検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本研究が対象とする言語について作成したパラレル・コーパスを用いて、各言語における不定人称文の検討、および言語間の比較を行い、先行研究では記述されていない事実を指摘するなど、一定の成果を挙げることができた。また、新たに複数のバルト海周辺諸言語のテクストを電子化することで、バルト海周辺諸言語に関するパラレル・コーパスをさらに充実させることができた。 旅費、人件費・謝金については、研究の進捗状況から、今年度より次年度の方が必要性が高いと判断されたため、次年度に繰り越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度、30年度の進捗状況がほぼ計画通りであったことから、次年度についても当初の計画通りに研究を進めていく。特に次年度は、30年度までの検討結果を踏まえて、現地における文献調査や聞き取り調査を行い、コーパスデータの検討から得られた結果を実証的に検証することを目指す。また、次年度が最終年度に当たることから、これまでの研究成果をとりまとめて学会等で発表を行う。 今年度から次年度に繰り越した旅費は現地調査のために用いる。人件費・謝金は現地調査の取りまとめをする際の大学院生の雇用に充当する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、当初予定より旅費および人件費・謝金の支出が少なかった。本研究ではコーパスのデータから得られた考察結果を実証するために現地調査が不可欠となるが、研究の進捗状況から判断して、30年度中に行うよりも、翌年度に繰り越した方が研究費をより有効に活用できると判断した。繰り越した旅費は次年度に使用する。また、人件費・謝金は、主に、現地調査で得られたデータ等の整理のため、大学院生等を雇用するために用いるが、現地調査を翌年度に繰り越すこととしたため、人件費・謝金も次年度の必要経費に充当する。
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Research Products
(2 results)