2017 Fiscal Year Research-status Report
An phonological analysis of fluency disorders and its application.
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17K02696
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Research Institution | Niigata University of Rehabilitation |
Principal Investigator |
氏平 明 新潟リハビリテーション大学(大学院), 医療学部, 客員教授 (10334012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発話の非流暢性 / 非流暢性の背景 / 非流暢性とピッチ変化 / 吃音者と非吃音者 / 有標と無標 / 日本語の音便 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度の研究の第1は,発話の非流暢性の背景について,生起とピッチの変化等について,これまでの研究成果を再検討した。日本語吃音者でアクセント型を持つ方言話者はアクセント核の1モーラ前の語頭モーラを繰り返すのが有意に多数を占める。次がアクセント核を持つ語頭モーラである。四声の中国語でも一番複雑な音調の1音節前の語頭音節の繰り返しが有意に多く,つぎがその音調を持つ語頭音節の繰り返しである。これを過去に収集した日本語の京阪方言話者と中国語の北京方言話者のデータで再度精査した。また非吃音者の非流暢性は,日本語と中国語の話者にこのような傾向がないことも同様に確認した。次は,この追試をアクセント型が異なる日本語の名古屋方言で試みることに着手した。吃音者のセルフヘルプグループの名古屋言友会の協力を得るため会長の斎藤圭介氏に連絡し,アクセントのより専門的な分析と考察のため,アクセントの専門家である神戸大学文学部の田中真一准教授と何度か情報交換をした。そして名古屋言友会の定期的な複数の例会で合計20名~30名の吃音者の自然発話をリニアPCMレコーダーで,個別に採取する準備と段取りを整えた。これは29年度に終了できなかったら30年度も引き続きこの収集を行い,終了と同時に田中准教授と分析の作業に入る。第3には日本語の非吃音者の発話の非流暢性の背景を探求するのも課題なので,非吃音者の非流暢性の再検討中,非吃音者の非流暢性では特殊モーラが極めて多数の非流暢性の引き金になっていて,特にその傾向が音便に見られることが明らかになった。日本語の音便の背景を日本語を通時的に辿ることから,また最適性理論の観点から,その一端を明らかにした。その成果を関西言語学会で発表し,その学会誌に投稿し掲載された。その理論的な背景から,非吃音者は言語の有標性に戸惑って非流暢性を発していることがより深く確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来なら発話の非流暢性とピッチ変化の統計的分析を29年度中に終える予定であったのが,30年度に持ち越している。遅れている理由は,研究代表者が29年度の春から夏にかけて,呼吸器と循環器の疾患のため心臓の手術等で病院への入退院を繰り返し半年近く研究態勢を維持できなかったことにある。秋には回復したので,研究に復帰し遅ればせながら順次予定の事を処理してきている。ただ療養中に書物や文献等の考察を通して理論的な構築が新たな局面へと展開できた。それが非吃音者の非流暢性の背景の探求結果に反映されている。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度の遅れを取り返しながら,30年度の予定の内容も後半から対応していく。また非吃音者の背景もより完成度の高いものに仕上げていく。 30年度前半には,名古屋言友会での吃音者の自由会話の録音を続けて実施し,収集した発話資料を神戸大学文学部の田中真一准教授と分析する。その分析と考察を通して,これまでの研究の追試を超える新たな発見を追求する。追試を超えるとは,より細かな部分に言及できることと言語一般に通じる事柄を見つけることである。また非吃音者の非流暢性の背景では29年度に撥音便をテーマとしていたが,30年度は他の音便の有標性と発話の非流暢性との関係をあきらかにしていく。これらの研究成果は年度末にまとめて翌年度の学会で発表または学会誌に投稿する。 30年度後半には,中国語のピッチ変化と発話の非流暢性に焦点をあてて研究を進める。東京外国語大学の花薗准教授の協力を得て,中国の吃音者矯正施設か中国のセルフヘルプグループの助力を得て複数の中国語(北京方言等)吃音者の自然発話の資料を採取する。これは中国の現地で行う。その資料を花薗准教授とともに,中国人留学生の助力を得て転写,記述して,分析する。 30年度後半の研究成果は31年度にまとめて,学会に発表するか学会誌に投稿する。 31年度は,これまでの成果を吃音セラピーとアセスメントに応用する研究を国立リハビリテーション研究所,学院の坂田善政教官と協力して行う。
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Causes of Carryover |
29年度前半は,体調が不良だったため研究態勢を保てず,予定した研究,主に発話の非流暢性の収集が準備と手順の設定段階で終了した。したがって収集実施のための謝金や交通費等が未消化のままである。その資料収集と29年度に予定していたその発話資料の転写,記述,分析ならびに研究成果発表に関わる交通費,謝金,消耗品等の費用に次年度使用額の70万円を充てる。
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Research Products
(2 results)