2019 Fiscal Year Research-status Report
An phonological analysis of fluency disorders and its application.
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17K02696
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Research Institution | Niigata University of Rehabilitation |
Principal Investigator |
氏平 明 新潟リハビリテーション大学(大学院), 医療学部, 客員教授 (10334012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発話の非流暢性 / 吃音 / 非流暢性の引き金 / アクセント / 声調 / ピッチの変化 / アクセント核 / コロナ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年と2019年に名古屋と岐阜の吃音セルフヘルプグループで、12名から吃音サンプル190例とその背景の連続発話を採取した。名古屋・岐阜方言は東京方言と同じ位置にアクセント核を有するが、語頭では遅上りの京阪方言の式保存があり、京阪方言や東京方言とは異なる背景からの非流暢性生起が予想できる。採取と転写とアクセント核の確認は連携の田中神戸大学教授と行った。結果は、非流暢性のアクセント核の位置は先行研究と一致し、語頭モーラを繰り返す非流暢性で語頭モーラか第2番目のモーラにアクセント核があるものが有意に多数を占めた。特に第2番目のモーラは危険率がより小さかった。新発見は吃音者がアクセント型を取り違えることであった。複合語で語頭が遅上りに変化するものに、元の型のピッチで語頭モーラを繰り返し、後に遅上りの複合語が発話される。これは語頭のピッチが複合語でも変化しない京阪方言や東京方言では生じない非流暢性である。アクセントが引き金の吃音は方言で異なる可能性を示唆している。これは中国語(北方方言)吃音でも同様な例がある。声調が特定の環境で変化する場合、吃音者が声調変化を捉えられずに従来の声調で語の第1音節を発した後、変化後の声調となる例が多々見られる。これをPAIK25周年記念大会で発表した。 そして継続して名古屋・岐阜方言の吃音データを精査するとともに、中国語の吃音サンプル採取を連携の花薗東京外大准教授と立案した。河南省鄭州の吃音矯正施設2か所が採取協力を承諾し、採取準備完了して実施直前に、コロナで延期となった。また2019年度開催の第15回音韻論フェスタに、上記成果を応募し、採択されたが、コロナでフェスタが中止となった。そしてその内容を英訳して、12th Oxford Dysfluency Conference に応募した。開催が9月下旬だったがこれもコロナで来年の1月に延期された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れの原因は中国語(北方方言)の採取先の問題とコロナの問題である。これまで被験者数が少なかった中国語吃音サンプルを再採取する予定であった。以前の科研費を用いての研究で調査していた雲南省大理の吃音矯正施設に依頼すると、2018年で閉鎖になっていた。大理の施設から紹介してもらった西安の口吃学校や伝手をたどっての長春の口吃学校とも吃音サンプル録音採取の承諾を得る交渉重ねた。しかし協力を得られなかった。中国の口吃学校の100軒ちかいHPを検索してコンタクトを試みたがうまくいかなかった。しかし2019年に東京外大の中国人留学生のネットワークから河南省鄭州の、煥錦口吃矯正中心(汪立彬氏主宰)と鄭州口吃中心(劉年生氏主宰)の口吃矯正学校(施設)が中国人成人吃音者約40~50名で協力するということになり、この件の連携研究者の花薗悟東京外大准教授と鄭州での矯正施設との相互情報交換の段取りを進め、通訳、宿、飛行機等の交通手段の手配も済ませた。その時点で河南省に隣接する湖北省武漢でコロナが発生し、鄭州の施設からも延期の申し出があった。したがってこの調査が現時点で止まったままである。この問題が沈静化すれば、即実行の予定である。コロナの影響は成果発表にもおよび、2019年度末に開催予定だった第15回音韻論フェスタが開催中止となった。このフェスタにアクセントと声調に関する研究成果を発表予定で、準備も進み、発表候補として採択されていた。やむを得ないので、その内容を英文に書き変えて、第12回オクスフォード非流暢性国際会議(12th Oxford Dysflurncy Conference)に応募した。その国際会議も9月開催予定が来年1月初旬に開催と延期された。そういう事情から、中国での吃音資料収集とこの時点までの成果発表がコロナの影響で大きく遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはコロナ問題で遅れている2点を回復させていく。コロナ沈静化が前提となるが中国河南省鄭州の煥錦口吃矯正中心と鄭州口吃中心で中国語吃音サンプルを20人以上の成人母語話者から収集する。日本在住の中国人留学生の協力を得て、その吃音サンプルと背景の発話の転写を行う。連携研究者と音声学・音韻論の基礎的な知識のある中国人留学生を交えて、転写した発話資料の記述を行う。分析の対象は非流暢性部分の生起位置、その単位、逸脱部分から正常な部分への音声の移行、そして関わる声調である。これまで3件のケーススタディで見てきた中国語吃音の傾向の追試となるか、新しい発見があるかである。いずれにせよ中国語が、これまでに積み重ねてきた研究の日本語、英語、朝鮮語の非流暢性サンプルと被験者の人数、サンプル数に匹敵する4か国語の非流暢性対照研究の形が整うこととなる。この4か国語対照研究の成果は、一部が年度末の12th Oxford Dysfluency Conferenceでの発表を経て論文化し、『Journal of Communication Disorders』(Eds.Jean K.Gordon)への掲載を試みることになる。また総合的な研究成果は20年前の博士論文からの発展の形で、別途研究成果公開促進費を得て東京のひつじ書房から専門書として刊行するつもりである。
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Causes of Carryover |
中国語吃音採取の事前計画が挫折して、再度計画立案から実施実現の準備段取りに時間を要したことと、コロナの影響が大きいので、研究実施が大幅に遅延している。研究費残額の主な用途は、まず中国河南省鄭州での吃音矯正施設(学校)2校との相互交換実費と謝礼、案内通訳の費用、宿泊交通費(研究代表者と連携研究者と通訳の東京外大院の留学生)、収集資料の転写、記述を複数の専門家で行う謝金等で約\1,000,000を費やす。 研究成果発表の国際会議(12th Oxford Dysfluency Conference)への往復の交通費と参加費用(宿泊費含む)、開催地は英国オクスフォードのオクスフォード大学セントキャサリンカレッジ、実施日程は4日間で、会議前か後にロンドンでロンドン大学のピーター・ハウエル教授と研究成果を交換して助言をもらう。これらの費用を残金で賄う。
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