2018 Fiscal Year Research-status Report
訳学書と実例-小田幾五郎のハングル口上書案と朝鮮語学書との比較-
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17K02756
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
許 秀美 龍谷大学, 文学部, 准教授 (50612826)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 朝鮮語学書 / 講話 / 小田幾五郎 / 対馬宗家文書 / 朝鮮語音韻 / 朝鮮語訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
「講話」は、江戸・明治期に対馬や薩摩で編纂され、朝鮮語通詞たちの語学教科書としてもちいられた朝鮮語学書の一つである。本研究の代表者は、「講話」の語学資料としての重要性に着目し、その成立過程を明らかにすべく、研究をすすめてきたが、今までに所在が確認された「講話」の写本のうち、入手がかなった資料には、成立過程をしめす記載がなかったため、許秀美(2016)においては、「講話」に収録された文例の題材となった事件と対馬宗家文書などの歴史資料と比較対照をおこない、文例の成立過程の一端をあきらかにした。 ところで、所在は確認されたものの、長年未公開であったため入手がかなわずにいた資料に、編集者および編集時期が明記されている写本が存在する。ホ・ジウン(2012)によれば、小田幾五郎の末裔にあたる大浦望人司所蔵「講話」に、「講話 全 1冊 写本 天明四甲辰五月編小田幾五郎」との記述があるとされ、編集者および編集時期が明記されている点で極めて資料的価値が高く、この種の研究家は、この資料の公開を長年願ってきた。 本研究の代表者は、2017年末、大浦望人司所蔵の小田幾五郎資料を保管・管理している鍵屋歴史館館長のご厚意により、積年の望みであった本資料の影印本の入手を果たすことができた。2018年には、入手した小田幾五郎編の「講話」の文献的考証と言語学的検討を実施し、許秀美(2018)を発表した。また、2018年末には鍵屋歴史館所蔵「講話」の原本データも入手した。 鍵屋歴史館所蔵の「講話」において最も注目すべきところは、小田幾五郎による書き込みである。本文の欄外への書き込みをはじめ、朝鮮語の音価に関するものや朱書きの修正・加筆もみられる。これらの書き込みは、朝鮮語音韻史の資料として貴重な情報を提供すると思われる。目下、これらの書き込みの分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小田幾五郎が編集した鍵屋歴史館所蔵本を入手できたことによって、他の写本との比較対照が可能になった。さらに、鍵屋歴史館所蔵本の原本データの入手できたことによって、小田幾五郎が朝鮮語学書を作成する上でどのような点に着目し工夫をしたのか、その成立過程を詳細に分析することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
小田幾五郎編集の鍵屋歴史館所蔵「講話」には、他の写本にみられない小田幾五郎自身によると思われる書き込みが多数みられる。これらを分析することによって、この時代の朝鮮語の特徴をあきらかにすることができる。
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Causes of Carryover |
予定した調査をおこなうため。
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