2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02787
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
小柳 智一 聖心女子大学, 文学部, 教授 (80380377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文法変化 / 弧例 / 副助詞 / とりたて / テニヲハ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず文法変化を記述する際に生じうる、資料上の問題について研究を行った。これは、昨年度にまとめて本年度に刊行した単著『文法変化の研究』(くろしお出版、2018.5)の内容に続く研究である。具体的には、文法変化の観点から、資料上に見える「弧例」をどのような言語現象の反映として解釈することが可能か、という問題を理論的に考察した。個々の事例を類型的に整理し、大きく3つの場合があることを指摘した(2019年度中に公刊予定)。 次に、やはり文法変化の類型に関する、通時的な対照研究を行った。上記の単著で、機能語(助詞・助動詞など)が新たに創り出される「機能語生産」の類型をまとめたが、その類型4種類について、古代日本語と近代日本語でどの類型にどのような事例があるかを観察した。その結果、日本語史を通して豊富な事例が見られる類型と、一定して事例の少ない類型と、古代日本語に多様な事例が見られるが近代日本語では事例が偏る類型のあることを指摘した(2019.1に口頭発表、近年中に公刊予定)。 また、副助詞を含む「とりたて助詞」を、通言語的な枠組みによって捉える研究を行い、その枠組みの中で現代日本語と古代日本語を対照的に記述した。そして、現代日本語だけを見ていては気づかない、日本語の「とりたて助詞」の特徴を指摘した(近年中に完成し、公刊予定)。 最後に、近世の鈴木朖『言語四種論』(1803年頃成)の「テニヲハ」について、日本語学史的研究を行った。これは朖の「テニヲハ」解釈をめぐる研究だが、昨年度までの研究を前進させ、「テニヲハ」観の背後にある近世独特の言語観を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にはなかった、文法変化と資料に関わる新規の研究を行い、先行研究にない視点と結論を示すことができた。また、副助詞を通言語的枠組みによって捉えるという、これも新しい研究に着手し、間もなく完成するところまで来た。さらに、昨年度から継続している日本語学史研究についても着実に前進させた。 以上のような研究成果が得られているので、上記のように評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の計画通りに進めるが、文法変化研究との関連で、副助詞の起源について新たな見通しが立ってきたので、それを展開する。また、文法変化研究の状況にここ近年動きがあり、特に注目されるトピックが現れてきたので、それも視野に入れて研究を行う必要を感じている。なお、日本語学史的研究についてもさらに継続し、完成に近づけることを目指す。
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Research Products
(2 results)