2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02787
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
小柳 智一 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (80380377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文法変化 / 機能語 / 活用研究史 / 活用形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず文法変化の研究を行った。昨年度からの継続で、研究論文を完成して刊行した(2020.11)。この研究は、機能語生産(機能語が作られること。何を資材として作られるかに着目して類型的に考察する)に関するもので、「機能語生産の類型間には、通時的に一貫した生産性の差がある。また、類型によっては時代差の見られるものがある。これは、それぞれの時代における、生産の資材の使用環境と関係する」ことを明らかにした。具体的には次の通りである。(1)内容語の「機能語化」と、機能語の「多機能化」は、通時的に一貫して有力な類型だが、機能語同士が複合する「複合機能語化」と、派生接尾辞の「昇格機能語化」はそうではない。(2)昇格機能語化は、古代の文献時代以前に動詞構成・形容詞構成の接尾辞を資材とする生産があったと推定されるが、その後はなく、中世以降に再び形容詞構成の接尾辞を資材とする生産がある。 次に、機能語の統語的環境を考える上で重要な用言活用形について、近世の国学者の著作を点検する過程で、通説に疑義を抱いた。そこで、「活用形」に焦点を当て、近世の重要な著作を詳細に検討し、これまでと異なる活用研究史を見出すに至った。その成果は研究論文として刊行した(2021.3)。具体的には、(1)鈴木朖『活語断続譜』と本居春庭『詞八衢』は「活用形」の見方が異なり、前者から後者への影響は認めがたい、(2)『御国詞活用抄』からそれぞれ独自に発展したと考えられる、(3)富士谷成章『あゆひ抄』の影響は、両書に見出せない、ということを指摘した。 本研究課題の主題である副助詞は、1つめの研究では昇格機能語化の事例として考えられ、2つめの研究では『活語断続譜』が活用形の認定に利用している。本年度の研究は、多角的に考察することの一環として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全く予想外のことだった、新型コロナウィルス感染症流行に伴う公務と、勤務校での役職の職務に莫大な時間を取られ、継続的に行う研究時間を確保することができなかったのが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
古代語の副助詞について基本的に、当初の計画に挙げた課題に取り組む。また、助詞に関する日本語学史的研究を進行中で、その成果の一部を刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定のノートパソコンの選定や、購入予定の書籍の探索ができなかったため。
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Research Products
(3 results)