2017 Fiscal Year Research-status Report
平安期鎌倉期の日本語における無助詞名詞句の運用システム
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17K02791
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
山田 昌裕 恵泉女学園大学, 人文学部, 教授 (70409803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有生名詞 / 無生名詞 / ガ格 / ヲ格 / 無助詞名詞 / 情報伝達システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は平安期鎌倉期それぞれの日本語において、助詞が下接しない名詞句(以下、これを無助詞名詞句とする)が、情報伝達上どのような役割を担い、それがどのようなシステムで運用されていたのか、その全体像を明らかにすることが目的である。これを踏まえて平成29年度の研究計画は次の通りであった。 国立国語研究所の『日本語歴史コーパス』を用いて、平安期の分析用のデータを作成する。検索条件式によって無助詞名詞句を検索する。次に無助詞名詞句に語性やテキストにおける統語的役割、構文的環境等の情報を付加する。Excelによるデータの数量的分析とともに、テキストと照らし合わせ無助詞名詞句の運用法を明らかにする。成果は以下の通りであった。 名詞の並列、時名詞、場所名詞、慣用句、サ変、呼称、数量詞などの例を除いた結果、検索結果約60,000例から約28,000例に絞り込んだ。そのうち約3,000例に対して意志無意志、格関係、構文的条件、述語成分などの分析情報を入れ、途中報告として、韓国日本文化学会で発表することができた。内容は次の通りである。 無助詞名詞は、ほとんどがガ格またはヲ格である(99.4%)。そして無助詞有生名詞の多くは意志性述語と呼応して行為者、すなわちガ格となる。無助詞ヲ格有生名詞は無助詞ヲ格のうち2%にとどまるため、有生名詞が対象となる場合には格助詞ヲの表示を受けるものと思われる。無助詞無生名詞は、属性の主体や情意の対象、存在主体や変化主体、他動詞の対象となる。一言でいえば非行為者と考えてもよい。 無助詞名詞には多様な成分が見られることは事実であったが、結果としてはガ格、ヲ格に偏ることが明らかとなった。また名詞の有生性無生性によって情報伝達システムが運用されていることも明かとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
検索結果約60,000例から、分析対象となる無助詞主語約28,000例にまで絞り込む作業に予想以上の時間を要した。また意志無意志、格関係、構文的条件、述語成分などの分析情報のデータを入力する際、前後の文脈理解を要する場合が多く、予想以上に時間が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
分析対象となる無助詞主語を絞り込むために時間を要したが、かなり用例数を絞り込むこととなったので、分析情報入力に関しては想定よりも早く終えられると予想する。もう少し時間配分を増やすことで遅れを取り戻せると考える。
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Causes of Carryover |
研究協力者の作業が進まなかったため、謝金額が予定の金額より低くなった。研究協力者の変更をしたので予定の謝金額に達する予定である。
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