2017 Fiscal Year Research-status Report
ノートの筆記過程の分析に基づく日本語学習者の講義理解過程の実証的研究
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17K02879
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
田中 啓行 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (40779774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 知子 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 教授 (20229040)
俵山 雄司 名古屋大学, 国際機構, 准教授 (30466685)
毛利 貴美 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 准教授(任期付) (60623981)
石黒 圭 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 教授 (40313449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 講義理解 / 談話構造 / ノートテイキング / 日本語教育 / アカデミック・スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ノートテイキング調査用の講義の収録・選定とパイロット調査を実施し、本調査の方法を検討したうえで、本調査に着手した。 講義は、専門外の調査協力者にもなじみやすい内容にするため、高齢者福祉、教育学、日本語学の講義を計4本準備した。これらは、使用する資料や講義の進め方が違うもので、①数語をホワイトボードに書くのみの高齢者福祉の講義(約5分)、②スライドで話題を示しながら進める高齢者福祉の講義(約10分)、③配布資料を用いて進める教育学の講義(約25分)、④スライドで話題や用例を示しながら進める日本語学の講義(約30分)の4本である。①と②は同じ講義者に依頼し、類似の内容で、提示する視覚情報が違う2本の講義を収録した。③と④はweb上に公開されている講義から選定した。 本調査について、今年度は日本語母語話者2名、中国語母語話者1名に対して、以下の内容の調査を実施した。まず、デジタルペンでノートを取りながら講義を視聴した後、講義の内容とキーワードの意味を母語で書く。講義①、②の視聴と講義内容の筆記が終わった後、講義①と②について、ノートの筆記過程を見ながらインタビューを行い、録音する。講義③と④についても、同様の手順で調査を行う。この調査で収集した(1)ノートの内容と筆記過程、(2)講義視聴後に書いた講義の内容とキーワードの意味、(3)録音したインタビューを分析資料とする。 また、当初の計画に追加して、海外の大学に在籍する日本語学習者の調査として、ドイツの日本語学習者11名の調査を行った。ドイツでの調査は、講義①、②を使い、デジタルペンでノートを取りながらの講義視聴、講義視聴後の講義内容とキーワードの意味の筆記、インタビューを行った。 調査の実施と並行して、収集した(1)と(2)の資料の日本語への翻訳、(3)の録音の文字化を行い、分析のための資料を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、講義の収録・選定、パイロット調査を実施し、調査方法を検討したうえで本調査に着手した。また、当初の計画に加えて、海外(ドイツ)の日本語学習者のデータを収集することができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に着手した本調査を継続し、年度前半に調査を完了する予定である。そのために、複数のスタッフで調査方法を共有することによって、調査を担当できる人の数を増やし、迅速に調査を進められる体制をとる。 また、調査と並行して、収集したデータの処理・分析を行うことで、調査完了後速やかに分析結果を出せるようにする。当初の計画に加えて、理解した講義の内容を母語で書くという調査項目を実施することにしたため、日本語学習者のデータについては、日本語に翻訳する処理が必要になった。そのため、インタビューの音声の文字化だけでなく、日本語学習者が書いた講義内容の翻訳を依頼できる体制を整える。 平成29年度に収集したデータの処理については、文字化、翻訳の大半が済んでおり、まず、平成29年度に収集したノートおよびその筆記過程のデータから、日本語学習者の語句の理解、語句の関係の理解、談話構造の理解について分析をまとめる。
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Causes of Carryover |
当初の計画に理解した講義の内容を母語で書くという調査項目を追加したことから、次年度に収集する調査データの処理のために翻訳者謝金が必要になった。そのため、計画よりも少額で済ますことができた人件費・謝金を次年度に使用することとした。今年度の人件費・謝金が少額で済んだのは、調査で使用する講義の一部をすでに公開されている講義から選んだことで講義者に対する謝金が少額となったこと、文字化を技術補佐員が担当したことで文字化の謝金が少額になったことによるものである。
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