2021 Fiscal Year Research-status Report
ルクセンブルクにおける移民の子弟への識字教育支援 -社会経済的不平等解消のために
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17K03009
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 敦 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00622482)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ルクセンブルク / 言語政策 / 言語権 / 識字教育 / 言語教育政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
・ルクセンブルクにおける移民や社会・経済的に不利な状況に置かれた人々について、どのような施策が行われているのかについて現地調査を実施できなかったため、昨年度に引き続いて教育省の資料や統計、新聞記事、雑誌記事、議会の議事録などを用いて調査研究を行った。 ・小規模な自治体が発行する広報誌の言語使用についても、昨年度に引き続いて調査を行った。昨年度に引き続いてルクセンブルク語が書かれる機会が増していることがみてとれた。また、同時にドイツ語の使用機会が減っていることもやはり見て取れる。フランス語については多くの民衆が理解できるということを前提として、多く用いられていることがわかっている。外国籍の住民の多寡にかかわらず行われているようである。 ・2017年に発表され、2018年には法制化されたルクセンブルク語振興(促進)戦略について、作られた政策的、政治的、社会的な経緯について調査を進めた。というのも、比較的リベラルであり、学校の多様化、多言語化を推進する2013年以来の現政権がルクセンブルク語の政策、特に教育政策についてこのような言語政策をとることはそもそもなぜなのかと考えられるためである。2021年3月発刊の研究ノートや、2022年度中に刊行される論文で、2000年代初頭からの言語統合政策、2015年の外国人の国政参政権付与を問う国民投票の否決を経て、振興戦略の契機となる住民による請願が出されるまでの経緯について論じている。また、今日のルクセンブルク社会はさらに多様化・多言語化しており、「振興戦略」とは関係なく、教育現場ではルクセンブルク語を統合の言語として位置づけつつも、フランス語やルクセンブルク語を用いて柔軟に対応していることがわかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症により海外調査ができなかったため。オンラインでインタビュー調査の実施も考えたが、調査対象者がコロナ対応で多忙であったこともあり文献やメールによる調査に限定せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航を行っての調査が可能になり、自由に調査が行えるのであれば当初予定していた調査を行う。 また、海外渡航が可能であれ不可能であれ、2017年の早期複言語教育政策に見られる言語政策の経緯やその後の状況についても調べる予定であり、様々な文献を駆使して調査研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、海外調査を実施できなかったため。 次年度は海外調査を行いたい。もし不可能な場合は文献調査を徹底する。
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