2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03048
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
漆原 徹 武蔵野大学, 文学部, 教授 (20248991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 友彦 皇學館大学, 文学部, 教授 (40278411)
神野 潔 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (40409272)
花田 卓司 帝塚山大学, 文学部, 講師 (60584373)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中世文書の料紙 / 中世武家文書 / 清墨花押 / 上杉家文書 / 相良家文書 / 駿河伊達家文書 / 御教書 / 下知状 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度では、上杉家文書、西山地蔵院文書、駿河伊達家文書の三つの文書群を調査し、料紙繊維の顕微鏡写真と文書の全体像を撮影して本研究に必要な試料蒐集に努めた。この過程で、文書の手触りと風合いが、顕微鏡写真の示す繊維状態といかなる関係性をもっているかということを各自がそれぞれ経験を蓄積していった。また料紙の質と使用される筆との関係性についても、下知状、御教書などですら、細筆が使用されていることが判明した。また現在日本古文書学会で論争となっている、上島有氏の主張する料紙の分類と、富田正弘氏の主張する歴史的名称による料紙の分類の対立点について、本研究の進展に伴い、料紙と文書様式の分類と、使用の歴史的展開についての解釈に根本的な相違点は存在せず、歴史的名称を用いるかどうかという問題点のみであると整理することが可能になった。これは一方で上島氏がいわば大家の感と称される長年の経験と多数の文書調査の経験から導き出された文書の見た目の風合いや、手触りから行った分類と、富田氏が顕微鏡写真の分析や料紙の重量、厚さなどの客観的計測数値から導きだした分類結果が、両者の名称の相違以外実質まったく一致しており、具体的な料紙と様式の差異という部分がないということが本研究の両者の手法を踏まえた研究調査によって確認された。本研究では、その両者の相違点について具体的な提言を行って、学説上の根本的相違点がないということを明らかにして料紙と様式の関係だけでなく、筆跡と墨、保存状況による料紙の変質についても総合的な提案を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨今のアーカイブズ学の文書保存管理の徹底から、繊維写真の撮影許可を得られる史料が限られ、裏打ちや加工のないなまの古文書で繊維状態を知りうる顕微鏡撮影を許可を得るための交渉に時間がかかり、予定より史料の集積が遅れている。一方で近年の表装では、『賀茂別雷宮神社文書』のように、料紙の状態を観察しうる仕上がりのものも存在することが本研究の過程で明らかとなった。いずれにせよ、古文書表面に接写する形式の顕微鏡撮影の許可を得ることは容易ではなく、当初予定していたより史料蒐集が遅れている現状であるが、個人所蔵の文書に調査の重点を移すことで解消する方向で調整の予定である。 九州地方では、神社や寺院などの機関所蔵の文書と並んで、個人所蔵の中世武家文書が多数存在しており、その中から表装などの加工を施されていない文書を選択して調査を実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
文化財指定の文書の顕微鏡撮影は許可を得る交渉に時間がかかるので、九州地方を中心にかなり存在する個人所蔵文書の撮影に重点を移してさらに資料を集めつつ、すでに蓄積した史料と総合し、筆跡と料紙との関係性、青墨花押の料紙との関係性など料紙と古文書学上の様式との関係性を明確にしていく作業を進めている。また3人の研究分担者と4人の研究協力者との定期的な研究会で、担当している作業分野から得られた新知見を共有するように努めているが、保存状態と料紙の変色変質という新たな課題の解決にも迫られる場面が生じいるので、この問題にも対応していきたいと考えている。そのためには、機関所蔵文書以外の表装などの加工が加えられていない個人所蔵文書を選択して、ここ現在の保存状況を確認しながら料紙とその変質状況の調査も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
京都での文書調査計画実施の検討会議が、研究分担者、研究協力者の日程調査委の結果、3月に設定され、また時期的な問題から旅費が予定より超過したことによって超過したことによる。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 後醍醐天皇2019
Author(s)
花田卓司他
Total Pages
218
Publisher
洋泉社
ISBN
978-48003-1633-2
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