2017 Fiscal Year Research-status Report
近世・近代行政組織における意思決定慣行と制度形成に関する研究
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17K03057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
籠橋 俊光 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00312520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 圭祐 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 特別研究員(PD) (30770127)
加藤 諭 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (90626300)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料研究 / 行政 / 意思決定 / 組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成29年7月27日に第1回研究会を開催し、初年度における研究代表者・研究分担者の調査・研究計画の検討と問題関心の共有を行うことにより、以後の研究方針の確定を図った。その上で研究代表者ならびに研究分担者がそれぞれの分野に関して史料調査・収集・分析を進めた。本年度における調査・分析結果は以下の通りである。 近世に関しては、研究計画を一部見直し、主な研究対象を仙台藩に限定し、その実態分析を本研究における主要課題として設定した。その上で、仙台藩における行政機構における意思形成と文書管理について検討を進めた。仙台市博物館所蔵伊達家文書の予備的な史料調査を行い、藩政文書の収蔵状況の確認とその傾向の把握を行った。 近世・近代移行期に関しては、明治初年の中央・地方行政官庁の文書(特に大蔵省文書)の網羅的収集とその分析結果に基づき検討を行い、稟議書の形式の成立には勘定奉行―大蔵省以外の系譜が存在すること、大蔵省が意思決定慣行の定着に大きな役割を果たしたとの見通しを示した。後者の見通しは、研究分担者である小幡が自身の著書『井上馨と明治国家建設』(吉川弘文館、2018年)において、大蔵省の意思決定慣行が太政官制潤飾・地方官会同・内務省建省を契機として太政官・府県・内務省に伝播したことを実証的に解明している。 近代に関しては、東北大学、東京大学、京都大学における文部省往復をはじめとする往復文書の大学アーカイブズにおける所蔵状況について調査した。その結果から、各帝国大学間でも往復文書の書式や残存状況に違いがあることが判明した。さらに、文部省と大学間のみならず、帝国大学間における公文書の書式比較も射程に含め、研究を進展させる視角が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、研究分担者である加藤が研究の主要史料収蔵先である東北大学史料館に異動したことにより、研究を進める上での史料へのアクセスに関わる基礎的条件が大幅に好転した。このことも含めて、全体としては当初の研究計画に基づいて順調に研究を進めている。ただし、近世に関しては、主要な研究対象の変更に伴い基礎的な史料収集に費やす必要が生じ、新たな史料調査に当たる時間的余裕が不足したことから、現状では研究代表者個人および勤務先所有の機材・図書を利用することとなり、結果として次年度使用額が生じることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、本年度の実績等をふまえて一部修正を加えた研究計画に基づき、本格的な史料調査を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の人事異動により史料調査・打ち合わせのための旅費が圧縮されたこと、シンポジウム参加費用が招待講演となったことなど、旅費が全体的に抑制された。加えて研究計画の一部変更に伴い、手持ちの図書等による検討が中心となったことなどから、史料調査時期ならびに調査機材等の購入時期にずれが生じた。次年度には本格的な史料調査等を開始することから、次年度研究費は次年度使用額をも活用しつつ、史料調査の旅費や機材購入等に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)