2018 Fiscal Year Research-status Report
近世・近代行政組織における意思決定慣行と制度形成に関する研究
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17K03057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
籠橋 俊光 東北大学, 文学研究科, 准教授 (00312520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 圭祐 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (30770127)
加藤 諭 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (90626300)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本史 / 史料研究 / 行政 / 意思決定 / 組織形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は平成30年12月21日に第2回研究会を開催し、研究代表者・研究分担者の調査・研究計画の進捗状況と最終年度に向けた成果の取りまとめについて議論し、以後の研究方針の確定を図った。研究代表者ならびに研究分担者がそれぞれの分野に関する史料調査・収集・分析の精度を高めた。本年度における調査・分析結果は以下の通りである。 近世に関しては、仙台藩における行政機構における意思形成と文書管理について検討を進め、近世後期の藩士による上書を収集・分析した。上書は、身分の上下を問わず可能な藩への政策提言であり、実際の政策決定にも大いに関与したものとして既に着目されている。この上書に関して、文書様式・内容などに関する総合的な分析を行い、上書が一般的な願書・訴状とは必ずしも一致しない、独特の様式を備えている可能性があることを確認できた。 近世・近代移行期に関しては、前年度に引き続き、明治初年の中央・地方行政官庁の文書の網羅的収集とその分析を行った。また本年度は新たに、明治初年に長らく太政官政府の参議と大蔵省の卿(長官)をつとめた大隈重信についての分析を開始し、大隈が大蔵省などでの経験を踏まえ、「事務局」という組織を立ち上げ、特定案件の意思決定を独占し国政を主導しようとしていたことが明らかとなった。分析結果は明治維新史学会例会において報告を行い、また論文を準備中である。 近代に関しては、前年度からの東北大学、東京大学、京都大学における文部省往復の所蔵調査を継続するとともに、新たに帝国大学として四番目に創設された、九州大学における未公開歴史公文書の調査を行った。その結果から、各帝国大学の往復文書の書式や残存状況は創設年度と相関関係があることが判明した。さらに、文部省と大学間のみならず、任免や進退録といった帝国大学間における人事異動と公文書の書式比較も射程に含め、研究を進展させる視角が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新史料の発掘や分析が大幅に進展し、それぞれの分野で今後の展開が十分に望める様相が確認できており、順調に研究を進めていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実績等をふまえて本格的な史料調査をすすめつつ、その分析・総括に当たる予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者の人事異動により史料調査・打ち合わせのための旅費が圧縮されたこと、史料調査の対象が近隣となったこと、シンポジウム参加費用が招待講演となったことなどから、本年度も旅費が全体的に抑制された。加えて研究計画の一部変更に伴い、史料調査時期ならびに調査機材等の購入時期にずれが生じた。次年度成果取りまとめのための綿密な史料調査、及び最終的な成果公開につながる公開セミナーや研究会を開催することから、次年度研究費は次年度使用額をも活用しつつ、史料調査の旅費や機材購入等に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)