2017 Fiscal Year Research-status Report
江戸考証家の古器物収集に見る歴史意識の特質とネットワークに関する研究
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17K03085
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
岩橋 清美 国文学研究資料館, 古典籍共同研究事業センター, 特任准教授 (50749653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歴史意識 / 書物編纂 / 考証学 / 博物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、松平定信『集古十種』、吉田小諸『聆涛閣集古帖』を中心にして、(1)古器物の収集・分類傾向から見た歴史意識の解明、(2)古器物収集を媒介とした人的・知的ネットワークの形成の分析、(3)考証家が編纂した集古帖の社会的影響、について検討することにある。 (1)については、桑名市博物館において『集古十種』の調査・撮影を行い、内容細目を作成した。『聆涛閣集古帖』については東京国立博物館所蔵本の調査を行った。東京国立博物館所蔵の『聆涛閣集古帖』は国立歴史民俗博物館で所蔵されているものとは、内容がかなり異なるため、両者の関係性については今後さらに調査を進めていく必要がある。 (2)については、東北大学附属図書館において、谷文晁「東方地方写生図」など、松平定信・谷文晁関係史料を調査・撮影し、『集古十種』の編纂過程と松平定信を中心とする文化ネットワークの解明の基盤となる調査を実施した。また、松平定信と林述斎の書状綴の調査・撮影を行い、古器物を介した松平定信と林述斎の知的交流が明らかになった。さらに、桑名市博物館の調査において、松平定信が古物について書き記した書状などがあることが判明し、松平定信の歴史意識やネットワークについてさらに掘り下げるための足がかりを得た。 次年度以降は、初年度に調査を行った史料の分析を進めるとともに、さらに史料の開拓を進め、(3)の課題である「集古帖」が社会に与えた影響、具体的には在村知識人の歴史意識に与えた影響について考察の範囲を広げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度計画は、(1)本研究の主軸となる松平定信『集古十種』(桑名市博物館蔵)、吉田小諸『聆涛閣集古帖』(国立歴史民俗博物館蔵)の調査・撮影、(2)史料保存機関に所蔵されている「集古帖」のリスト作成の2点であった。(1)については、桑名市博物館において調査・撮影を実施し、さらに東北大学附属図書館において松平定信・谷文晁関係の史料調査と撮影を実施した。『聆涛閣集古帖』については東京国立博物館に所蔵されているもののみ調査を行った。国立歴史民俗博物館に所蔵されている『聆涛閣集古帖』については次年度撮影を行う。 (2)については国文学研究資料館の新日本古典籍データベースをおよび同館所蔵の目録類からリスト作成を行った。大学図書館・地方の史料保存機関の所蔵状況については、今後も引き続き情報収集を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は『聆涛閣集古帖』の撮影と『聆涛閣集古帖』をめぐる人的・知的ネットワークに関わる調査を中心に行う。とくに『聆涛閣集古帖』に収録されて正倉院宝物について穂井田忠友などの関係からアプローチし、天理大学図書館・宮内庁書陵部などの調査に重点をおく予定である。
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Causes of Carryover |
勤務先の事情により予定している出張が実施できなかったため。
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