2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸考証家の古器物収集に見る歴史意識の特質とネットワークに関する研究
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17K03085
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
岩橋 清美 國學院大學, 文学部, 准教授 (50749653)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 松平定信 / 集古十種 / 古物認識 / 歴史意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、昨年度実施できなかった天理大学附属天理図書館において松平定信関係史料の調査を行い、白河藩士田内親輔が編纂した「守国公御伝記草稿」のうち「御行状記草稿」を中心に閲覧した。本史料は、同じく定信の伝記をまとめた岡本茲奬の「感徳録」が文化人としての側面に重きをおいているのに対し、政策面の記述が多く、政策決定過程および定信の政思想を具体的に知ることができる史料である。 このほか、「感徳録」から「集古十種」編纂過程を裏付ける記述の抽出を行った。その過程で、定信が老中を務めていた寛政4年(1792)までは幕府の御用絵師をはじめ屋代弘賢らの幕臣を中心に調査を進めていたが、老中退職後は藩士を中心に調査を継続し、その過程で藩士に絵画や印刷技術を習得させていたことを明らかにした。 また、古物調査・古物修復の一環として、蒔絵師・瓦師など古物に関わる領内の職人の養成も積極的になされ、結果として「急備焼」などの特産品をつくり出し白河藩の殖産興業にも貢献することになったことがわかった。この点から定信の古物調査は『集古十種』編纂にとどまらず、彼が創り出した文化空間に家臣や領民を参加させ「君臣共楽」の場としたことに歴史的な意義があると言える。こうした研究成果の一部について学会において報告した。 このほか、屋代弘賢「みちの幸」・谷文晁「ふところ日記」をもとに、古物調査のルートおよび調査対象となった古物の分析を行い、報告書作成に向けたデータの整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施できなかった天理大学付属天理図書館において松平定信関係史料の調査を実施し、その成果の一部について学会発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
天理大学附属天理図書館などにおいて補足調査を行い、これまでの研究のまとめとして報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症の影響により予定していた調査をすべて実施できなかったため、研究成果を報告書としてまとめられず次年度使用額が発生した。よって天理大学附属天理図書館などにおける補足調査を実施し、これまでの研究成果を報告書にまとめる。
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