2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03108
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| Research Institution | Toyo University |
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Principal Investigator |
白川部 達夫 東洋大学, 文学部, 教授 (40062872)
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2017-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | 干鰯 / 鯡粕 / 〆粕 / 肥料商 / 地域市場 / 干鰯問屋 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近世後期の市場変動の中で、肥料商がどのような対応を行ったか。あるいは肥料商の活動が地域市場にどのような影響を与えたかを検討することである。地域としては、主に阿波国と播磨国を中心にして調査を行い、その近世後期の肥料商の動向と社会変動を対象に分析を行うこと目指している。今年は、徳島県立文書館の調査を実施し、近年公開された文書の中から、肥料関係の文書を撮影した。また姫路市史編纂室の協力を得て、姫路市内の肥料関連文書を調査した。とくに、的形・中村家文書はこの地の動向を示すものとして注目している。的形は、瀬戸内海に面した小港であるが、19世紀に入り、堤防が整備されると、入港する船舶が増えるようになり、この荷物を取り扱う問屋商売のものが成長した。中村家もその一人であり、その扱い品目のなかに魚肥があり、これにより、瀬戸内海の地域市場の展開と肥料商の活動が明らかにできると考え調査を行っている。文書の撮影はもう一回調査すれば、基本的には終わり、分析にかかる予定である。また播磨国相生の浜本家文書は、今回、兵庫県立博物館で補足撮影を行った。これについては干鰯の売帳をエクセルデータに読む作業を進めている。研究成果としては「大坂干鰯屋と諸藩」（北村行遠編『近世の宗教と地域社会』岩田書院、2018年2月）、「近世阿波における肥料取引の諸相」（『東洋大学文学部紀要』71集史学科43号、2018年2月）を発表した。前者はこれまで知られていなかった大坂干鰯屋と諸藩の関係を近江屋長兵衛家文書等から紹介したもので、19世紀になって諸藩の魚肥専売と大坂直売にたいする干鰯屋の動きが明らかになった。また後者は、藍の肥料の前貸しの様相を検討して、幕末期になると前貸し利子は低下し、藍葉決済を前提にしない、肥料販売が増加したことを指摘した。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の問題は、調査における文書撮影と文書の解読・エクセルデータの作成作業に膨大な手間を要することにある。調査と撮影については、姫路市史編纂室の協力は得られるが、文書は市内に散在しており、調査許可の交渉に時間がかかっている。またエクセルデータ化の作業は、播磨国相生の浜本家文書を中心に今年度実施したが、干鰯当座売帳が分厚く、概ね1年分2500件程度に及ぶため、まだ天保8年から4冊ほど処理したにとどまっている。5年おき程度でデータ化しているが、明治23年までデータ化して分析したいので、やや遅れているのが現状である。外部発注してもいるが、文書が独特の癖の字で書かれているため、判読能力の高いものでなければ頼めない。またそのチェックに多大の労力がかかるが、それは研究代表者しかできない作業なので、この面でも、難しさはある。今年度は調査を少し控えめにして、この作業にあたるつもりである。
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| Strategy for Future Research Activity |
今年も阿波と播磨を中心に調査を行う。また、相生・浜本家文書を中心に帳簿のエクセルデータ化を進める。阿波については、藍葉買い付けのために、藍師が肥料を前貸しするというスタイルが一般であった。そこで藍葉の買い付けと関連させて、資料を分析する必要があるので、藍葉買付帳などを撮影する必要が出てきた。今年度の分析で幕末期にはこれが崩れ始めたことがわかってきているものの、藍葉買い付けと肥料の前貸しの実態をもう少し意識的に研究する必要が生まれている。そこで藍師・三木家の藍葉買付帳の撮影を補足的に試みたい。また播磨は的形を中心に、北前船など蝦夷地と大坂・兵庫を結ぶ全国市場にたいして、瀬戸内海各地の需要に応える域内市場の発展をうかがえる場所であり、こうした地域市場と肥料商売の関係を意識的に追求できればと考えている。いずれにしても史料のエクセルデータでのデジタル化とその整理が重要で困難な作業となる。今年は少し調査を抑えてそちらに力を注ぐことで作業を進めるようにしたい。
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| Causes of Carryover |
予定していた調査経費が少なくてすんだ。残額は12161円とわずかなので、次年度の調査経費に合算して使用したい。
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