2017 Fiscal Year Research-status Report
「長い70年代」の東西欧州知識人交流から人権規範・実践のグローバル・ヒストリーへ
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17K03179
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 康浩 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70219377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パーヴェル・リトヴィノフ / カレル・レーヴェ / スティーヴン・スペンダー / ゲルツェン財団 / Index on Censorship / 長い1970年代 / 異論派 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ソ連異論派の一人、パーヴェル・リトヴィノフを支援した西側知識人の動向を把握するとともに、中心的支援者であったカレル・レーヴェとスティーヴン・スペンダーの二人のプロジェクトのうち、前者が創設した「ゲルツェン財団」のアーカイヴ文書を国際社会史研究所(アムステルダム)にて調査することを予定していた。しかし、今年度は更なる資料調査を見送り、すでに収集済みであった同アーカイヴの文書(オランダ語、ロシア語、英語の資料)の分析を中心に実施した。その結果、レーヴェのプロジェクトとスペンダーのプロジェクトのいずれにおいても、西側支援者の一人であったピーター・レッダウェイ氏の役割が予想以上に大きかったことが判明したため、ワシントンに在住の氏にアプローチすることを優先した。米国人研究者のつてをたどって連絡を取ることに成功し、インタビューを申し入れたが、Emailでのやりとりを望まれたため、その方法で質問をし、本研究プロジェクトに関わる貴重な回答を得た。 また、研究作業を進める中で、パーヴェル・リトヴィノフ氏が寄贈した個人文書がスタンフォード大学フーバー研究所のアーカイヴに所蔵されていることが判明したため、研究計画を修正し、リトヴィノフ氏の個人文書(手紙、原稿、インタービュー記録など)を閲読することを29年度の課題の一つとした。30年3月にフーバー研究所を訪問し、氏関連の文書の全体におおよそ目を通し、様々の関係者との間で交わされた手紙、氏が受けたインタビュー記録など、本研究に不可欠な重要資料を数多く得られた。 そのほか、昨年度から引き続き執筆していた英語論文Transnational Moral Interaction between Soviet Dissidents and Ex-Communist Western Supporters の草稿をほぼ書き上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた国際社会史研究所(アムステルダム)での資料調査は見送ったものの、すでに得られていた資料の分析を進めることはできたので、作業はおおむね順調に進捗しているといえる。加えて、当初の予定になかったリトヴィノフ・ペーパーズ(フーバー研究所所蔵)の閲読が実現したので、西側支援者サイドではなく、ソ連の異論派サイドの作業が予想以上に進んだ。 本研究課題に関係する成果の発表も可能な段階に入りつつあり、全体的にみて順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度見送った国際社会史研究所(アムステルダム)でのゲルツェン財団に関わる資料調査を今後もう一度実施し、当財団の活動を解明するうえで不可欠な資料収集を完了する予定である。また、ゲルツェン財団の文書、スペンダー・アーカイヴ、リトヴィノフ・ペーパーズの資料を詳細に分析し、本研究課題が設定する「長い1970年代」における人権規範・実践のグローバルな展開についてその具体像を明らかにしていく。とともに、これらの人権実践が、1975年のヘルシンキ協定締結のプロセスにどのように作用したのか、当時の国際関係の文脈のなかにそれを位置付け、評価を加えていくことも予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が1,320円発生したが、海外出張を実施した際に結果的に余った残額であり、特段の問題はないと考える。繰越額はわずかであり、翌年度分として請求した助成金と合わせて、研究計画にしたがって支出する予定である。
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