2019 Fiscal Year Research-status Report
「長い70年代」の東西欧州知識人交流から人権規範・実践のグローバル・ヒストリーへ
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17K03179
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 康浩 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (70219377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パーヴェル・リトヴィノフ / カレル・レーヴ / スティーヴン・スペンダー / ゲルツェン財団 / Index on Censorship / 長い1970年代 / 異論派 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の主たる調査対象であるカレル・レーヴらの「ゲルツェン財団」とスティーブン・スペンダーらの「作家学者インターナショナル(WSI)」の活動を、その他の人権団体との国際的なネットワークの中でとらえなおす試みを行った。そこでまず、アムネスティ・インターナショナル(AI)との連携関係を調査するために、国際社会史研究所(アムステルダム)が保管するAIの国際評議会などの資料を閲覧し、とりわけWSIの創設時にAIが深く関係していることを示す文書など、複数の貴重な情報をえた。 と同時に、ニューヨークでソ連異論派支援活動に携わったエドワード・クライン(1932-2017)が、1972年に国外追放となったソ連異論派のヴァレリヤ・チャリッゼらとともに設立したフロニカ・プレス(1974年にニューヨークに移住した異論派パーヴェル・リトヴィノフも参加)の活動を知るために、クラインがハーバード大学に寄贈したアーカイヴ資料の閲覧を実施した。その作業の過程で、コロンビア大学により充実したクラインの個人文書があることが判明したため、最終年度に出張を予定している。 もう一つの作業の柱は、以上のべたすべての団体の活動に主要人物として関係していたLSE教員のピーター・レッダウェイによる活動の調査である。彼がゲルツェン財団のメンバーと交わした手紙が国際社会史研究所に大量に残されており(すでに収集済み)、それに目を通す作業を実施した。それを通じて、レーヴ、レッダウェイ、クラインらの濃密な人間関係を知ることができたのは本年度の最大の成果であった。なお、レッダウェイは回想録を2019年に出版し、そこからも有益な情報が得られた。 なお、本年度は、国際誌 Contemporary European Historyに投稿していた論文がようやく掲載に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終目的は英語でのモノグラフの出版である。その一部をなす論文の公刊はできたが、その他の主要な章の執筆が上手く進んでいない。最終年度末までに、主要な2つの章の原稿を書き上げることを目標にしている。 その他の研究作業上の問題点としては、WSIのアーカイヴ資料がロンドンのBishopsgate Libraryにあることを掴み、年度末の3月24日から一週間の予定で出張し、資料調査を行う計画だったが、コロナウイルスの感染の広まりのため出張を断念せざるを得なかったことである。入手すべき資料が得られなかったのは、本年度から来年度にかけて予定していた執筆作業に支障をもたらしている。 海外出張を今後再開できるのかどうか不分明のため、本研究プロジェクトの遂行上、その点は大いに気がかりなところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、企画している英文での成果書の主要な章の執筆を終えることを計画している。そのための資料充実に向けて、コロンビア大学、ロンドンのBishopsgate libraryでの資料調査を予定しているが、その実施が可能かどうかは今のところ判然としない。それが滞った場合にも、予定している章のドラフトを書き上げることを目指す。
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Causes of Carryover |
年度末の3月に1週間の海外出張(ロンドン)を予定していたが、コロナウイルスの蔓延のためキャンセルを余儀なくされた。科研費による支出を予定していた航空運賃は航空会社からの払い戻しがあったため、その額が次年度に繰り越しとなった。
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