2019 Fiscal Year Research-status Report
衛星画像のGIS分析による隋唐都城とシルクロード都市の空間構造の比較考古学的研究
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17K03218
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
城倉 正祥 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90463447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 慎二 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (00609901)
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (20617469)
山内 和也 帝京大学, 付置研究所, 教授 (70370997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国都城 / 唐代都城 / シルクロード都市 / 西域都市 / 造営尺 / 衛星画像 / 地理情報システム / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、2019年度が3年目であり、連動して採択された科研費(国際共同研究加速基金)と同時に研究活動を進めた。具体的には、2019年3月~2020年3月までの期間、中国社会科学院考古研究所に「客座研究員」として滞在し、漢魏洛陽城・北斉ギョウ城・隋唐洛陽城・隋唐長安城・遼上京城を発掘する各隊と連携して研究を進めた。 当初の予定では、3年目の計画として、西域都市(高昌故城・交河故城・北庭故城)の分析と踏査をする予定だった。しかし、中国国内で新疆が不安定な状況にあるため、現地踏査は中止し、衛星画像を中心とした分析を進めた。中国国内で、論文・報告書の収集作業を行い、唐代西域都市の情報を悉皆的に集成した。また、1960年代に撮影されたCorona衛星画像による残存遺構の解析行い、その成果を、現代の衛星画像に投影する基礎作業を行った。さらに、キルギス共和国アク・ベシム遺跡、すなわち唐砕葉城の分析成果をまとめる作業も並行して行った。 以上の作業によって、唐長安城・洛陽城といった中原都城と西域都市の構造原理の比較が可能になった。現在の新疆地区の状況では、外国人が自由に遺跡を踏査できないため、衛星画像を中心とする分析となったが、当初の予定通り、西域都市の特徴を把握する成果を上げることができた。 なお、2020年1月から発生したコロナウイルスの感染拡大の影響によって、本研究も影響を受けることになり、2カ月間の在宅勤務を余儀なくされた。そのため、中国政府が公開するCNKIなどのデータベースを利用する研究活動に切り替えて対応した。また、年度末に予定していたキルギス共和国アク・ベシム遺跡での現地整理作業が中止せざるを得なかったが、遺構や衛星画像の分析を進め、ほぼ当初の予定通りの成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に連動して採択された科研費(国際共同研究加速基金)の経費と制度を利用して、中国社会科学院考古研究所に2019年3月~2020年3月まで滞在し、研究活動を進めた。本研究課題については、西域都市(高昌故城・北庭故城・交河故城・砕葉城)の衛星画像によるGIS分析を目的としていたため、ほぼ予定通り進めることができたものの、国際共同研究加速基金については、2020年1月より始まったコロナウイルスの世界的感染拡大の影響を受けて、研究が遅れることになり、やむを得ず1年間の延長申請を行い、受理されることになった。 このように連動する科研費の研究課題が遅れることになったが、本研究課題は当初予定していた3年目の課題「唐代西域都市の構造分析」をほぼ達成することができ、おおむね順調に進展している。しかし、コロナウイルスの影響を受けて、2020年3月に中国社会科学院考古研究所で予定していた招待講演、2020年4月に早稲田大学で予定していた考古学会での招待講演、2つの講演会が中止となったため、成果の発表に関しては、若干、予定通りに進んでいない状況にある。また、共同研究者への海外調査の分担金として支出した経費に関しても、コロナの影響によって使用することができず、繰越することになった。 以上のように、コロナの影響をある程度受けたが、本研究課題については、おおむね順調に進めることができた。2020年度が、本課題の最終年度であるため、研究成果の発信に向けて作業を進めることで、研究を総括していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の部分で記述したように、本研究はほぼ当初の予定通り進展している。2017・2018・2019年度の3年間で、唐代西域都市の高昌故城・北庭故城・交河故城・砕葉城の衛星画像の分析をほぼ完了した。2020年度は、研究の最終年度にあたり、当初の計画では分析データをまとめ、デジタル科研報告書を刊行する予定になっている。 科研報告書は、隋唐長安城・洛陽城での分析成果を基本とし、西側の西域都市、及び東側の渤海・日本都城との比較を中心とした内容にする予定である。そのため、2020年度は、過去の衛星画像の分析成果、あるいは遺構の分析成果をまとめる作業を計画的に進める。補足のデータ収集や画像解析作業のため、アルバイト雇用も予定している。また、科研報告書の編集はIndesignを用いて進める予定だが、デジタル関連物品の購入も行う予定である。 なお、研究の学術的な成果発表となる科研報告書は、300部を印刷して国内外の主要機関に無料配布するとともに、配布完了後は早稲田大学の学術データベース(リポジトリ)に無料PDF版を公開し、世界に向けて発信する予定である。また、この学術的成果に関しては、講演会やHPでの発信など、学会だけでなく、広く社会に向けて発信を予定している。また、2020年度末までには難しいが、日本語の報告書刊行後には、中国語版の公開準備も進め、準備ができた段階で、データベースで公開を予定している。唐代都城という研究対象のため、中国の考古学会にアピールする活動も重要だと考えている。 以上のように、2020年度は4年間の研究成果を総括する研究活動を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題と連動して、科研費(国際共同研究加速基金)が採択され、2019年度は10カ月間、中国社会科学院考古研究所で客座研究員として研究に従事した。そのため、当初国内でで予定していた研究補助の雇用や研究資料の購入ができなかった。そのため、次年度に繰り越す予算が生じたが、本科研の最終年度である2020年度に研究を総括する学術報告書を刊行する予定のため、関連した研究補助や資料購入として費用を費消する予定である。
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