2017 Fiscal Year Research-status Report
Basic Studies on the decorated tumuli in Pasema highland area in Indonesia
Project/Area Number |
17K03233
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
河野 一隆 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 課長 (10416555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 晴啓 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (40366513)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / 装飾古墳 / デジタルアーカイブ / GPS / GIS / インドネシア先史文化 / 巨石文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではインドネシアに分布する装飾古墳を対象として年代的位置や系譜関係を解明するための基礎研究を展開する。このために、日本で入手できる文献を収集し、インドネシア側と日本側の研究成果を擦り合わせ、GPS観測に基づいた遺跡分布地図の作成、高精細・高密度の装飾古墳3次元データの構築を研究目標に策定した。今年度は基礎文献である『南スマトラの巨石記念物』のほか、和文はもちろん英語圏のパセマ高原の先史記念物の考古学調査関連刊行物を集成し、国会図書館や各大学図書館から取り寄せた。インドネシア語論文については31件をリスト化し、国立インドネシア考古学研究センター(ARKENAS)のカウンターパートであるトリウルジャニ氏(Triwrujani)に依頼して取り寄せ、外注して翻訳した。さらに効率的かつ合法的に研究を推進するためには、インドネシア現地機関の協力が不可欠であるとの認識のもと、国立考古学研究センター(ARKENAS)に足を運んで研究の趣旨を説明し、役割分担を明確化した。そしてパセマ高原の先史文化研究に造形の深いトリウルジャニ氏、測量技術に長けたシナトリア氏(Shinatria)の助力を得て、10月19日にはARKENAS本部で、所長と研究協定を締結した。インドネシアで自国民以外が研究を展開する場合にはRISTEKへの登録が不可欠で、その前提として研究機関との協定が必要だからである。さらにパセマ高原の装飾古墳のGPS観測をしても、GIS(地理情報システム)で処理するための基礎地図が無かった。このため、インドネシア地理情報機関(BIC:BADAN INFORMASI GEOSPASIAL)に地図利用の申請書を提出し、対象地域であるパガララム市からラハト市南部にかけてのデジタル地図を入手した。さらに、昨年度までの予備調査で訪問し、簡易計測したGPSデータを入力して、分布地図を完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本でほとんど周知されないが、装飾技法では密接に関連するインドネシア先史時代の装飾古墳の基礎研究を展開する。申請前に、2年に亙る予備調査を行い、装飾文様の撮影と簡易GPS計測を実施したが、国内のみの研究では限界があった。 そこで、本年度の目標はインドネシア側の研究成果の擦り合わせと位置情報を表現するためのデジタル地図の入手を目的に、インドネシア国立考古学研究センター(ARKENAS)とインドネシア地理情報機関(BIC)との協力関係を確立することが初年度の課題となった。そこで、研究の趣旨と方法、役割分担などを共有するため、ARKENASとは10月19日に協定書に調印し、考古学調査関連文献などを取り寄せることができた。また、BICにも趣旨説明を行い、デジタル地図を入手することが出来た。そこで、今まで簡易GPS観測したデータを地図情報として可視化することができた。さらに、インドネシア側との調査結果の擦り合わせをすることができ、パセマ高原の先史文化研究に造形の深いトリウルジャニ氏と研究成果を交換し、日本側の研究班が訪れていない遺跡や遺構の現状について、相互で共有することが出来た。これらの作業を通じて、2年次目以降に踏査対象とする地区・遺跡の絞り込みや、調査計画を策定することに有益な基盤を確立することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次目は、3年次目のための準備作業を進める。3年次目の目標は、インドネシア・南スマトラのパセマ高原に所在する装飾古墳の写真測量を実施し、3D計測モデルを作成、情報発信することである。また、初年次の目的は、そのための調査対象となる古墳を絞り込み、GPSデータを可視化するための基礎地図データを入手することであった。 そこで、中間年次である2年次目は、日本側で未踏査の装飾古墳の現地調査と簡易GPS計測、3年次目の本格調査のための下見と必要条件(物資調達やアクセス等)の確認に充てた。まず、現地調査の対象は(タラン・パガラグン)Talang Pagar Agung(インドネシア側の情報では、装飾あるも判読不明)とし、画像とGISに載せられる位置情報データを取得する。さらに、3年次目の下見は、現状のところ、最も装飾の遺存が良好な、レンバク(Kota Raya Lembak)7号墳を対象とし、付近の公共座標の有無、計測に必要な資材の調達方法、現地へのアクセス方法などについて、実際に計測を担当する技術者を派遣して確認する。これらの作業は、雨季が到来する前でラマダンに入る前の4月中に行うこととしたい。
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Causes of Carryover |
昨年度末にインドネシア大使館へ、研究申請ヴィザを取得するための申請準備を進めていたが、当館のみならず、大使館等や共同研究の相手先も含めた諸般の事情により、年度を跨ぐこと明らかとなった。このためやむなく繰り越した上で、平成30年度に申請することとし、その経費に充当することとした。
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