2018 Fiscal Year Research-status Report
山村の社会経済の広域性・流動性に関する東西日本の比較研究
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17K03241
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
安食 和宏 三重大学, 人文学部, 教授 (00231910)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 山村 / 広域性 / 流動性 / 就業構造 / 世帯構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年の山村地域の社会経済にみられる特徴的な「広域性」「流動性」現象が、広く山村地域一般でみられるのか、そこにどのような地域性があるのかを明らかにすることである。そこで、東北地方(福島県)と紀伊半島(三重県など)を対象として、東西日本の比較の視点から本テーマを考察することとした。 平成30年度は、まず8月に、三重県熊野市(旧紀和町)を訪問した。現地の第3セクターにおいて、事業の内容と今後の展望などについて聞き取りを行った。そして、旧紀和町内の全集落を訪ねて、集落景観と土地利用(あるいは放棄)状況に注目して調査を行った。全体的に獣害対策と耕作放棄地が目立ち、集落の縮小傾向が理解できた。また統計上の世帯数に比べて家屋数がかなり多い、つまり空き家が多いことが特徴的であり、この点についてはさらに調べる必要がある。 次に、11月に、福島県南会津町を訪問した。観光関連の第3セクターを訪問して、事業の内容と課題等について聞き取りを行った。その後、町内の観光施設の調査を行い、さらに旧伊南村の南部の全集落を訪ねて、集落景観と土地利用(あるいは放棄)状況に注目して調査を行った。対象地域では、花卉栽培などの特徴的な農地利用もあるが、全体的には、やはり耕作放棄が目立つ状況である。すでに世帯の離村が多数見られる集落と、激しい縮小が見られない集落の対照性は興味深いところであり、今後の検討課題となる。 さらに12月に、福島県会津若松市を訪問した。11月の調査で把握できなかった資料を調べるためであり、現地の図書館において、本研究に関わる資料を入手することができた。 平成30年度の研究実績の中心は、以上の3回の現地調査である。会津地方と紀伊半島地域の両者において、近年の社会経済の状況と特徴を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、近年の山村地域の社会経済にみられる特徴的な「広域性」「流動性」現象が、広く山村地域一般でみられるのか、そこにどのような地域性があるのかを明らかにすることである。 2年目となる平成30年度は、前年度に引き続き、紀伊半島地域(三重県)と福島県会津地方の山村調査を平行して進めた。その結果、西日本(紀伊半島)では、集落の縮小が特に著しいことが把握できた。これは、当初の予想通りともいえるが、実際には空き家が相当多いことも特徴的である。これは、山村社会の「広域性」「流動性」を示す現象とも思われるが、今後の調査が必要とされる。また、東日本(会津地方)では、西日本ほどに急激な山村集落の縮小は見られないが、集落ごとの違いが大きいのも一つの特徴である。この点についても考察を進める必要がある。 以上のように、本研究では、東日本と西日本の比較という視点を生かして、山村集落の状況の違いを調査して考察を進めているので、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の平成30年度には、前年度と同様に福島県会津地方山村と紀伊半島山村での調査を行うことができたので、今後もそれらを継続して、現地調査を軸とした研究を進めていく。 平成29年と30年の調査により、東日本と西日本の比較という視点の有効性は確認された。この研究の枠組みを変更する必要はないが、現地調査により、検討すべき課題も見えてきた。それは、山村における多数の空き家の意味、それがどう機能しているかということ、また集落ごとの社会経済の違いが生じる理由は何かといった点である。 研究の3年目には、これらの点に留意しつつ、よりミクロなスケールでのヒアリングを行い、調査研究を深める。そして、21世紀の新たな山村像を描くことを目標として研究を展開する予定である。
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Causes of Carryover |
平成30年度には、現地調査を3回行い、かつ統計資料等を購入して、おおよそ当年度に配分された直接経費のほとんどを使用した。次年度使用額が生じている理由は、平成29年度の未使用額まで執行できなかったためである。次年度においては、旅費の適正な執行に努め、また研究に必要な備品、消耗品等の購入を進める。
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