2019 Fiscal Year Research-status Report
山村の社会経済の広域性・流動性に関する東西日本の比較研究
Project/Area Number |
17K03241
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
安食 和宏 三重大学, 人文学部, 教授 (00231910)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 山村地域 / 産業構造 / 村落社会 / 農業変化 / 土地離れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年の山村地域の社会経済にみられる特徴的な「広域性」「流動性」現象が、広く山村地域一般でみられるのか、そこにどのような地域性があるのかを明らかにすることである。そこで、東北地方(福島県)と紀伊半島(三重県)を対象として、東西日本の比較の視点から本テーマを考察することとした。 令和1年度の実績としては、11月に、福島県南会津町(旧伊南村)を訪問し、農業関連事業を積極的に展開している農業生産法人において、事業の内容と課題等について聞き取りを行った。この地域の農業経営の現状と今後の展望等について学ぶことができた。また、町立図書館で資料を収集し、町内の観光施設(道の駅など)の調査を行った。さらに旧伊南村南部において、特に人口・世帯数の減少が激しかった集落を訪ねて、集落景観と離村の状況に注目して調査を行い、空き家と家屋を取り壊した跡地(空き地)の現況について把握することができた。 次に、三重県(紀伊半島)の山村を対象とした調査研究としては、山村の産業構造等の変化を具体的に数値で把握するために、「国勢調査」と「農林業センサス」の統計データを用いて分析を行った。その結果、現在の山村地域においては第3次産業が極めて重要になっており、特に「医療、福祉」と「卸売業、小売業」のシェアが大きいことが明らかになった。また農業に関しては、農業活動の著しい縮小、耕地面積の縮小と耕作放棄の拡大の実態について、具体的に把握することができた。これらの分析結果は論文として公表した。 令和1年度の主な研究実績は、上記の現地調査と統計データ分析である。これらによって、山村地域の社会経済の現況に関する研究を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、近年の山村地域の社会経済にみられる特徴的な「広域性」「流動性」現象が、広く山村地域一般でみられるのか、そこにどのような地域性があるのかを明らかにすることである。 平成29年度には福島県と三重県・和歌山県において、そして30年度には三重県と福島県において調査を行い、資料を収集した。それらを踏まえて、令和1年度も福島県で現地調査を行った。そして、具体的な数値データで山村の変化を把握する必要性を感じたことにより、三重県については、現地調査ではなく統計データの分析を行った。 こうして、現地の自治体や関係者相手のヒアリングで得られた知見と、統計データの分析結果を照合することが可能となり、山村の社会経済に関する理解を深める事ができた。研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトについては、研究期間の1年延長が承認されたので、研究内容をより充実させるために、令和2年度の調査研究を進めていく。これまでの調査の蓄積を生かして、東西日本の比較という視点を重視し、対象地域は変更せずに、福島県と三重県の事例山村において、関係者のヒアリングを個別に進めていき、研究の深化を図る予定である。 しかし、現在の日本では、新型コロナウィルス感染症が社会全体に大きな影響を与えており、この事態が長引くと、こうした研究プロジェクトで必要とされるヒアリング等の実施が困難になる事態も想定される。その場合には、ヒアリング中心ではなく、文献・統計データの活用に切り替える等の判断が求められるかもしれない。今後の社会情勢の変化を見ながら検討することとなる。
|
Causes of Carryover |
平成29年度において、旅費の執行が予定より少なかった等の理由により、未使用額が生じた。平成30年度と令和1年度においては、それぞれの年度の配分額をほとんど執行したが、結局29年度の未使用額が残っている。令和2年度は、旅費などの適正な執行に努める。
|
Research Products
(1 results)