2022 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnographic study on Balinese performing arts in Jakarta
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17K03277
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉田 ゆか子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (00700931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャカルタ / バリ舞踊 / 芸能の場所性 / マイノリティ / バリ・ヒンドゥ / 宗教間の相互理解 / ルジャン / 都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はジャカルタ首都圏(以下ジャカルタ)における、宗教的少数派であるバリ人の宗教・芸能活動および、それらを通じた非バリ系住民(主にムスリム)との交流・相互理解・交渉を明らかにするものである。最終年度はジャカルタとバリ島へ渡航し、パンデミック前の調査を補完した。またジャカルタにおけるCOVID-19の芸能への影響をバリ島内と比較考察した。 初年度から最終年度まで、本研究ではいくつかのヒンドゥ寺院とバリ舞踊団を例に、芸能・儀礼実践を記録した。ジャカルタではバリ舞踊が、非バリ系の子女に広く学ばれている。現地のヒンドゥ教の行事では、芸能への非バリ系の住民の参加が盛んであり、時にそれは儀礼の欠かせない一部となる。バリ芸能が周囲の環境と結びつき、独特の展開を見せる様を具体的に描きだした点は本研究の成果の一つである。 本研究のもう一つの柱は舞台衣装に関わる問題である。ジャカルタではムスリム女性の身体露出を嫌う傾向が年々強まり、露出が多いバリ舞踊の衣装はイスラム的ジェンダー規範に反すると見做されうる。そのなか、ムスリムが衣装を加工する等の工夫が見られ、またそれを許容するバリ人側の葛藤と譲歩もあった。他方でムスリムの踊り手は、バリ芸能と親しむ中で、日常の装いを変えたり、バリ舞踊家としてのアイデンティティを育んだりもする。こうした、装いと自己意識の動的な関係について、国際シンポジウムにて異分野の専門家達と議論したことも本研究の成果の一つである。 またメディアも本研究の重要なトピックの一つとなった。物理的に離れていても、Stay Homeが推奨されても、動画サイトやオンラインレッスンを通じて芸能が学ばれる。伝承経路の多様化は、ジャカルタのバリ芸能の発展に少なからぬ影響を与えた。本研究では新しい奉納舞踊が次々とバリからジャカルタへと伝わり大流行した過程を追い、メディアと芸能の関係について論じた。
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