2017 Fiscal Year Research-status Report
Judicial Policymaking in Japan and the United States
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17K03320
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
秋葉 丈志 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (80453009)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政策形成型訴訟 / 憲法訴訟 / 日本国憲法 / アメリカ合衆国憲法 / 連邦最高裁 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
政策形成型訴訟の日米比較研究の基礎となるデータの収集が今年度の主たる実績である。 特に、同性結婚を全米で合法化する(州法による同性婚の否定を違憲とする)2015年の歴史的最高裁判決に至るまでの道のりで大きな役割を果たしたFreedom to Marryというナショナル・キャンペーンの創設者によるセミナーに参加し、訴訟の経緯や戦略、様々なアクターとの連携、政府との交渉、また世論への働きかけなど、各面にわたってまさに自分が調査対象としている事項について詳細を聞くことができた。さらに、同氏の事務所で2時間に渡る単独でのインタビューをできたことは、この研究の重要な基礎資料となる。 また、現在連邦最高裁で大きな注目事案となっている「党派的ゲリマンダリング」(党派に有利なように選挙区を恣意的に引く行為で、全米で横行していると指摘される)について、原告側の代理人であり、今回最高裁で口頭弁論も行った弁護士にも、充実したインタビュー調査を行うことができた。 このように、日米比較研究のうち、アメリカで、「同性結婚」「選挙制度」の2つのケースの基礎データを収集することができた。この研究プロジェクト全体では両国で4つずつ程度のケースを取り上げ比較研究の素材とすることを想定しており、まずアメリカについて前進が得られた。 日本については、ヘイトスピーチという民族差別の領域で、訴訟という手段を通じて当事者への制裁、また世論・政府双方への働きかけをする動きについて研究した。関係団体の勉強会への参加や、運動に中心的に関わっている方へのインタビューを行った。 なお、初年度は基礎データの収集段階のため、論文の執筆や学会報告はこれからだが、滞米中ワークショップで経過報告をしたほか、『法学セミナー』に「ヘイトスピーチ」についての論稿を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日米両国で4つずつ程度のケースを取り上げ比較研究の素材とする予定だが、まずアメリカで2つのケースについて基礎データを集め始めたところである。特にアメリカでは、思った以上に取材対象の弁護士などの日程がきつく、協力的ではあるが2か月先までアポを入れられない、といようなことがあった。このため、全体的に思ったほどの数のインタビューはできていない(但し実現したインタビューについては質が高くかつ貴重なものと感じている)。 また、一つ一つのインタビューについて、質問項目を絞り込むために相当程度、一番聞くべき点を見極めるための「予習」が必要となっており、この点でも予想以上に時間を要している。 現実的には日米両国で3つずつ程度のケースに絞り、それぞれについて調査データを質量ともに拡充するのがよいかもしれない。 こうしたことから、「やや遅れている」としたが、研究目的やその価値の実現については、当初構想において示した内容通りで進められると感じており、今後も着実に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる30年度は、日米両国のケースに関する基礎データの収集に継続して取り組むとともに、一部ケースについて、得られたデータとその分析を、学会ないしは研究会で報告し、論文を発表することを目標とする。 そのうえで最終年度である31年度には、こうしたケースをまとめて、全体を通じた分析と日米比較を、学会等で報告したい。それをその後、著書(2冊目の単著)にまとめることが最終的な目標である。 なお具体的には、30年度は、日本において「一票の格差」に関連する訴訟、また「ジェンダー差別」に関連する訴訟をケースとしてデータ収集に当たりたい。またアメリカでは、29年度に引き続き「同性愛者差別」に関連する訴訟と「選挙制度」に関連する訴訟に関するデータを収集するとともに、あと一つほどケースを選び、そのデータ収集を開始したい。 このように30年度中には、少なくとも合わせて5つ程度のケースのデータ収集を進め、年度後半には、このうち特に研究の進んだものから、経過報告を学会ないしは研究会で行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は2つある。一つは、半期のサバティカルを取得できたことにより、このうち2か月半をアメリカで過ごすことで、インタビューのために複数回渡米する費用を節減できたこと。 また、アメリカの研究者に相談した結果、この種の調査で謝金を支払わないことにしたためである(この点、日本と慣行が異なった)。 次年度使用額については、今年度は再びサバティカルを取得できることはないため、渡米調査の追加費用とする予定である(概ね一度の追加渡米で使用額を必要とする見込みである)。
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