2020 Fiscal Year Research-status Report
脱植民地化時代における空間秩序の位相―実効性なき領域秩序の可能性―
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17K03391
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
許 淑娟 立教大学, 法学部, 教授 (90533703)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ポストコロニアル国際法 / 領域法 / 海洋法 / 脱植民地化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、植民地化以前の非ヨーロッパにおける領域秩序を現代の領域法や海洋法によって適切に評価することができるのか、その可能性と限界の探求にある。 2020年度も引き続き、現代の領域法の出発点といえる「主権の表示」アプローチの意義とその変容を、諸判決及び諸文献から確認を行った。本年度は、いかに過去の合意あるいは書かれた領域権原に基づいた領域主権の判断がなされたのか、それがどのような意義を持つのか(リビア・チャド事件(1994年)におけるSenoussi Orderの行為、カメルーン・ナイジェリア事件(2002年)におけるナイジェリアの歴史的凝縮の議論、さらに、西サハラ意見、ペドラ・ブランカ事件やエリトリア・イエメン仲裁など)という知見に基づき、陸の領有の条件を改めて確認する作業を行い、それを活字にまとめる機会を得た。論文においては、領域権原という概念がその相対性によって有用性を保持しつつも、脱植民地化の文脈において、特にその国家性の認定において、一定の限界を有すること、さらに、相対性の幅を広げすぎることによって、領域権原を支える基盤構造が揺らいでいることを示した。 以上の考察から発展して、リギタン・シパダン事件やニカラグラ・ホンデュラス事件を通じて、再検討を行った。書かれた権原を絶対視するとも理解し得るウティ・ポシディ―ティス原則の相対的意義について、Post Colonial effectivitesという概念からの考察を進めている。具体的には、Post Colonial effectivitesと権原としての主権の表示の違いはなんであるか、主権の主観的要素の働き、無主地を回避することに対する考慮があるか、自決原則の発現形態について考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
島の帰属紛争における領域権原の概念をまとめることによって、Post Colonial Effectivites概念やウティ・ポシディーティス原則と無主地概念に関する再考察が必要なことが明らかにすることができたため、理論的な深みを期待できる。在外研究中に十分に従事できなかった東アジアにおける領域秩序の関する先行研究も再開しており、植民地化以前の非ヨーロッパにおける領域秩序を現代国際法における評価可能性について着実に検討が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であり、引き続き、国際裁判の傾向として指摘した①書かれた権原における合意とはなにか。②領域主権における主観的要素の役割は何か。③主権と領域を繋ぐものとして、人的つながりや近接性というものの再浮上の三点のうち、②および③の役割を考察する。とくに、Post Colonial Effectivitesの意義を素材に検討を進めたい。2018年度に進めていた東アジアにおける国際法および領域法の受容ならびにその置換の歴史学的な検討を再開し、その知見を判決分析に組み入れる作業を行い、研究成果のとりまとめとしたい。
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Causes of Carryover |
本課題と密接に関連するものの国際共同研究加速基金の課題を主に従事していた。帰国後も、国際共同研究のフォローアップのための作業が一定程度残っていたため、本課題からの研究費使用額が当初の予定より大幅に減少した。今年度は成果をまとめるために、追加的な資料収集(コロナ禍のため出張が困難と予想されることから謝金や郵送費も想定する)を続け、資料整理のために必要な機器を適宜購入することに用いる。
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Research Products
(1 results)
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[Book] Journee d’etudes de la SFDI :iles et droit international2020
Author(s)
Societe Francaise pour le Droit International, Jean-Louis iten, Niki Aloupi, Lucius Caflisch, Sookyeon Huh, Mathias Forteau, Ida Caracciolo, Pierre Bodeau-Livinec, Valerie Parisot, Frederique Coulee, Valere Nido, Hyun Jung Kim, Laphaele Rivier, Lucie Delabie, Sarah Cassella, Yaouba Cisse, Santiago Villalpando
Total Pages
286
Publisher
Pedone
ISBN
9782233009579