2017 Fiscal Year Research-status Report
Protection of Personal Information by Criminal Law
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17K03426
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
永井 善之 金沢大学, 法学系, 教授 (50388609)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 個人情報 / プライバシー / 仮想通貨 / 財産犯 / 刑法 / 経済刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタル技術を背景とした個人に関する情報の取得、蓄積、流通等の処理過程の容易化、大規模化およびこれに伴う個人情報の著しい高価値化に伴い、その不正な収集や利用等も増大、深刻化する一方、これら情報の刑事法的保護についてはその検討さえ十分ではない現状に鑑み、本研究ではこのような情報保護のための刑事規制の理論的基盤の明確化を目的とする。3年の研究期間の初年度たる平成29年度においては、これら刑事規制の法益や保護対象情報の範囲等に係る理論的考察の参考とするべく、コンピュータ関連技術の最先進国であると共に所謂サイバー犯罪等の先端領域的課題に対しても先駆的な立法的対応をなしてきたアメリカをはじめとする先進諸外国における私的情報保護法制の体系や規制根拠論等の把握・分析を試みたところ、これら諸国では近時、一定の普遍的な財産的価値を伴う情報の一つとしての仮想通貨の取扱が重要かつ喫緊の課題となっていることが明らかとなった。即ち本研究での分析により「国家等の発行に係る法定通貨と異なりこれら発行者による価値保証は受けないが、一定条件下で法定通貨のように流通し、決済手段とされうる電子的な価値情報」と定義付けられうることが判明した仮想通貨は、決済手段としての特性からマネーロンダリング等への不正利用等が懸念され、国際的にもそのための法的規制体系が構築されつつあり、わが国でも平成29年4月にはその取引業者に対するいわば業法的規制が導入されるに至っているが、その投資目的での利用傾向の強いわが国でのその相次ぐ消失事件(平成26年のマウントゴックス事件、同29年のコインチェック事件)にも示されるように、その保有者にとっての情報財産としての要保護性も強いといえる。このような観点から、この問題の喫緊性に鑑み今年度は、その保護に係る法的規制の可能性の予備的検討に注力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄にて前述した平成29年度の研究進捗状況が当初計画通りであること、また、以上の成果の公表も行い得たことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究での参考ないし比較法の対象としての外国法の把握・分析を主たる内容としつつ、「研究実績の概要」欄にて前述したような成果を得た。もっとも、ここで検討し得た内容は要保護性の高い私的財産的情報の一局面にとどまるものであることから、これに限られない、いわば人格的価値を中核とする情報、すなわち従来いわゆるプライバシーに属するとされてきた諸情報について、刑事法的保護の必要性やその範囲、具体的規制の態様等を現代的観点から再考察することが必要となる。次年度は比較法的分析をも平行させつつ、これらの考究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」欄にて前述した比較法研究のため、年度末の国外出張を予定していたところ、個人の保有する情報財産の喪失というべき本研究上重要な事件(2018年1月末のいわゆるコインチェック事件)がわが国で発生したため、その分析・考察とその公表作業のため上記出張を次年度に延期したことによる。このように、次年度使用額が生じた理由は研究遅延といった事情によるものではないため、本研究の全体計画において助成金使用計画に大幅な変更等はない。
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Research Products
(1 results)