2017 Fiscal Year Research-status Report
責任保険契約の関係当事者における利益相反状態から生じる法律問題の研究
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17K03445
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
深澤 泰弘 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40534178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 責任保険 / 防御義務 / 解決義務 / 協力義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、責任保険契約が被保険者である加害者に対する損害賠償責任について保険者が保険給付を行うという特有の構造を有することから生じる関係当事者間の利益相反状態に基づく種々の法律問題のうち、①保険者の防御義務または解決義務の適用範囲及び義務違反の判断基準、②防御を行う弁護士の行為規範のあり方、③被保険者の協力義務の内容及び義務違反の判断基準、そして④免責事由である「故意」の適用範囲の明確化の4点について、米国法の議論を参考に検討を行うものである。米国法を参考にしている理由は、米国法ではこれらの問題について多くの裁判例が存在し、盛んに研究がなされていること、そして、これに関連して我が国の法研究においても重要な役割を果たすリステイトメント(責任保険法リステイトメント)が現在アメリカ法律協会により作成されていることからである。研究の初年度である平成29年度は①についてリステイトメントのファイナルドラフトを参考に検討を行った。特に、保険者が保険給付を争う権利の留保の方法(リステイトメント15条)、独立防御の提供(16条・17条)、防御費用の返還請求(21条)、防御費用補償保険(22条)について検討を行った。権利留保や独立防御の問題については、その問題の前提がわが国とは大きく異なる点で、我が国に同様の問題が直ちに発生するとは思えないが、防御費用の返還請求の問題や防御費用補償保険については、我が国でも十分に検討する余地のある問題で、米国の議論から非常に有益な示唆を得ることができた。米国では防御費用の返還は原則として行えないが、そのような立場には反対意見も多く、一定の場合には防御費用の返還を認めるべきであること、そしてそのためにも防御費用補償保険の必要性があることが分かった。これらの成果については保険学会関東部会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、保険者の防御義務または解決義務の適用範囲及び義務違反の判断基準と、被保険者の協力義務の内容及び義務違反の判断基準について、資料収集、分析・検討を行う予定であり、前者についてその成果の一部を保険学会関東部会において報告することができたが、論文の公表までには至れなかった。また、後者についても検討を行っているが、学術誌への掲載は平成30年度にずれ込むことになってしまった。さらに、米国に行ってリステイトメントのリポーターであるペンシルベニア州大学のベイカー教授へのヒアリングを予定していたが、自身の海外研修でカナダに3か月間滞在することになったので、平成29年度に予定していた米国でのヒアリング調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは平成29年度に行う予定であったものを確実に行いたい。平成29年度に保険学会関東部会で報告した保険者の防御義務または解決義務の適用範囲及び義務違反の判断基準に関する研究は、平成30年度中に学会誌である保険学雑誌に掲載する予定である。また、被保険者の協力義務の内容及び義務違反の判断基準に関する研究についても、平成30年度中に学術誌である損害保険研究に掲載予定である。さらに、夏に渡米して、リステイトメントのリポーターであるペンシルベニア大学のベイカー教授へのヒアリングを行う予定である。 平成30年度はさらに防御を行う弁護士の行為規範のあり方、そして免責事由である「故意」の適用範囲の明確化についての研究も行う予定である。最終年度の平成31年度の夏までにはこれらについての研究成果の発表も行いたいと考えており、その後総括的な検討を行い、本研究を締めくくる予定である。
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Causes of Carryover |
リステイトメントのリポーターであるペンシルベニア大学のベイカー教授へのヒアリング調査を行うために、渡米費用を含む本年度の旅費を当初30万円と計画していたが、カナダへの海外研修に3か月間行ってきたため、平成29年度中の訪米は断念した。そのため、主にその旅費を含む229,920円の次年度使用額が生じてしまった。平成30年度には米国でのヒアリング調査を行う予定であるので、平成29年度に使用できなかった分については、この旅費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)