2017 Fiscal Year Research-status Report
Pentalogy on Fish and Game: Defining the Particulars of Wildlife Law
Project/Area Number |
17K03503
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 満彦 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (10401796)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 洋美 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (70405950)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 狩猟 / 猟期 / 狩猟者 / 野生動物管理 / 法社会学 / 資源管理 / 鳥獣被害対策 / 漁撈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、研究代表者高橋が提案する「野生動物法」の各論構築として、対象動物、場所、時季、道具、人に関する研究成果を上げることである。29年度は研究初年度として、今後の方向性を研究組織内で共有するとともに、計画に従って研究を着実に着手することを主眼とした。 まず高橋の実績を述べる。計画していた猟期漁期の研究に関しては、原稿の執筆をほぼ終え、30年度中に発表できる状況である。 研究着手を予定していた狩猟者に関する研究は、予想以上に研究が進展した。2012年に高橋と研究協力者上田剛平らが狩猟者2万人以上を対象に実施したアンケートをもとにまとめた論考が受理された。この研究は、以前の科研課題から継承発展されたものであり、計画どおり30年度に分析の発表が可能となった。また、民主主義科学者協会法律部会年次学術大会の全体シンポジウムで、狩猟者と鳥獣被害対策の従事者の在り方を主題とする講演を行った。講演内容をもとにした論考も完成し、30年度中に学会誌に発表される。 次に研究分担者田口は、マタギの伝統的な狩猟文化と現代の野生鳥獣問題を軸に研究を展開し、本科研の課題に関するものとして、漁具・猟具でもある丸木舟に関する論考等、順調に成果を発表している。 次に、研究協力者村上一馬と高橋は、山形県小国町のマタギ映像資料のDVDへの再編集を元狩猟者の協力を得て実施した。また、本科研の事業そのものではないが、村上が東北歴史博物館で企画した特別展示「熊と狼」に、田口と高橋が協力した。田口は現在は禁止猟具だが、マタギの生業史的に貴重な圧殺罠「おし」の復元に協力し、講演を行い、高橋は危険猟具に関する法規制の沿革について調査し、助言した。また29年度は研究期間前半でもあるため、東北、北陸で狩猟への参与観察を含めて現地調査を行うとともに、海外調査も実施し、今後の著作への貴重な材料の取材を精力的に行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度に予定していた事項は、猟期・漁期に関する研究及び論考執筆と、狩猟者、漁業者に関する研究に着手し、30年度に論考を執筆することであった。前者の猟期・漁期に関しては、論考がほぼ完成する状況である。後者の狩猟者・漁業者に関する研究は、研究代表者高橋については、環境省の認定鳥獣捕獲等事業者制度検討会の委員を務めたことで、各種の議論に触れることができたこともあり、予想以上に進展し、論文を複数完成し、学会発表も行った。受理された論文には、計画していた全国狩猟者アンケートの分析も含んでいる。研究分担者田口は、漁具・猟具でもある丸木舟に関する論考等、順調に成果を発表している。また、田口と高橋は、研究協力者村上一馬の博物館展示「熊と狼」を支援した。このように狩猟に関しては好調だが、漁撈に関しては研究の進捗は緩慢である。 調査については、田口が実猟への参与観察、高橋の法令及び聴き取り調査、村上と高橋による古文書調査(富山大学蔵江戸期文書)など、狩猟に関してはほぼ予定をクリアしているが、漁撈に関してはほぼ未着手である。海外調査に関しては、予定にあるように米国に出張した。時季と天候の都合で、フィールド調査よりも文献調査と研究会出席が中心となったが、新たに発足したトランプ政権下での政策変化の激動を実感することができた。 以上のように、狩猟に関しての成果発表は予想以上に順調といえるが、漁撈、漁業に関する調査が遅れているため、おおむね順調と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
I 29年度中に完成にまでは至らなかった猟期・漁期に関する論考を完成させて発表する。 II 29年度に研究を着手した猟人・漁人、即ち狩猟者や有害捕獲捕獲従事者、漁業者に関する研究については、複数の論考が執筆できたが、今日的課題は広範囲にわたるため、引き続き追求する。特に有害鳥獣捕獲等の従事者に関しては、29年度に認定鳥獣捕獲等事業者制度に関する省令改正があったため、狩猟者制度と有害鳥獣捕獲制度について、スピード感をもって研究を推進し、さらなる成果を出したい。 III 交付申請書では、30年度は猟人・漁人の研究を実施し、余裕があれば猟具・漁具の研究に着手することとしていたが、有害鳥獣捕獲などで捕獲された動物(果実)の扱いについて、実務者からの照会相談もあるため、対象動物に関する研究に着手することとする。特に獲物の扱いは、狩猟者制度の在り方にも大きくかかわるため、猟人・漁人の研究と並行して行うのが合理的である。したがって、猟具・漁具の研究は優先順位を下げ、31年度以降に本格化することとする。 IV 上記研究のための調査として、国内においては東北、北陸地区、海外においては米国またはケニアにて調査を行うことを検討する。富山大学蔵の古文書調査を引き続き行う(村上、高橋ほか)。29年度中に行った文献調査で、イングランドが中世近世の狩猟・漁業法令資料が入手しやすく、かつ、大陸の欧州諸国に比べて王権が強く集権的などの国制上の理由から法令の実効性と浸透度も高く、研究がしやすいことが分かったので、我が国との比較対象として注目したい。
|
Causes of Carryover |
海外調査が年度末出発で年度またがりとなり、旅費が30年度予算に計上されたことにより、額面上は大幅な繰り越しとなった。また、経費節減にも努めた。 30年度は、研究の速度を維持するために古書洋書などを含む文献等、必要な物品を購入するとともに、研究分担者も含めて海外調査の実施を検討する等、適切に研究費を活用する。特に30年度以降はイングランドの近世における狩猟漁撈規制について研究を進める予定なので、書籍にも相応の使用額が見込まれる。 また、研究成果の還元のため、機会をとらえて国際学会で発表するなどの予算使用も検討したい。
|
Research Products
(11 results)