2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03539
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧口 剛 大阪大学, 法学研究科, 教授 (10257959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢嶋 光 名城大学, 法学部, 准教授 (30738571)
久野 洋 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(PD) (10795181)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自由通商 / 近代日本 / 政治史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の初年度である2017年度においては、「自由通商の近代日本政治史」に関係する資料収集を行うと同時に、瀧口が主催する大阪大学における研究会を開催して情報交換および討論を行った。 資料収集分析活動としては、第1に瀧口が自由通商運動の指導者であった平生釟三郎の日記編纂に携わると同時にその分析を進めた。これにより1920年代において国際連盟と歩調を合わせて自由通商運動を開始した協会が、1930年代にアウタルキー経済を指向し日本の大陸政策に同調してゆく過程の一端を明らかにした。第2に矢嶋は、通商の自由を志向する国際連盟との関係を強化する志向を持つ外務省連盟派についての研究報告を国際政治学会で行った。また政党の動向を明らかにするために、政友会関係者特に中島知久平関係の資料を、群馬県立中央図書館・中島文庫と太田市尾島庁舎・中島記念室において調査をおこなった。自由貿易の地方的基盤を担当する久野は、犬養木堂記念館や岡山県立記録資料館、岡山県立図書館、野崎家塩業歴史館で、犬養毅や犬養の政治的支援者、岡山県内の有力政治家の史料を閲覧・収集した。さらに犬養の政治活動の地方的基盤を岡山を中心とする経済界との関係において明らかにする論考を発表した。 大阪大学における研究会では、矢嶋が「外務省連盟派とその政策」を報告したほか、中谷直司「書評:久保田裕次『対中借款の政治経済史』を読む」、藤井崇史「日清戦後における対清経済利権問題 -製造業問題をめぐって」など本研究課題に関連する報告に基づく討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近代日本における「自由通商」指向の政治史上の役割を探求することを目的としている。具体的には、第一に戦間期を中心に自由通商を支持する基盤と有力な保護主義的潮流を抑え込んだ政治メカニズムを明らかにし、第二に国際協調崩壊から戦時体制形成へと至る過程のなかで「自由通商」支持ネットワークがどのように変容し、またこれに関与したのかを探求することである。 上記の研究課題を達成するために、メンバーによる資料の収集分析と平行して研究会を開催する予定であったが、概ね順調に進行している。 瀧口は、全体の進行を監督しつつ、大阪財界を中心とする自由通商への指向とその影響について、調査検討した。そのために自由通商運動の指導者であった平生釟三郎の日記編纂に携わると同時にその分析により、戦間期の大阪財界を中心とする自由通商指向の基盤を明らかにする作業をすすめた。矢嶋は、通商の自由と関係の深い「外務省連盟派とその政策」に関する研究報告を行うことにより、外交政策の中での通商の自由の意味を明らかにした。また政友会の領袖の一人でありかつ軍需会社を経営する中島知久平関係の資料を収集分析をすることにより、政友会の戦時体制化への寄与と通商経済との関係を明らかにする作業を進めることができた。地方的基盤を担当する久野は、犬養毅や犬養の政治的支援者、岡山県内の有力政治家の史料を閲覧・収集した。なかでも犬養木堂記念館に所蔵されている史料は、本研究課題を達成する上での重要史料が多く含まれることが判明した。 また大阪大学における研究会において、計画通り近代日本と通商に関連する研究報告を行い情報交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、引き続き「自由通商の近代日本政治史」に関係する資料収集を行うと同時に、研究会を開催して情報交換を行う。 瀧口は、本プロジェクト進行を管理すると同時に、引き続き平生の日記解読と分析を行うことにより自由通商運動の実態を明らかにする。さらに英国のナショナルアーカイブズにおいて日英の通商関係に関する調査を行う予定である。 矢嶋は、自由通商派の一角である外務省連盟派の戦後の活動について調査する予定である。具体的には、ユネスコ加盟について外務省外交史料館および国立国会図書館憲政資料室で調査をおこなう予定にしている。 久野は犬養の地元岡山における一次史料の発掘、分析を進めるとともに、『山陽新報』や『中国民報』など地元紙の論説記事の検討を継続して行っていく予定である。 さらに、大阪大学において政治史研究会を随時開催し、情報交換と討議を行い全体としての研究の底上げを図る。 また各人は、それぞれ学会報告、論文執筆などの形で成果を公表する。
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Causes of Carryover |
書籍などを購入する予定であったが、数万円分を翌年度に購入することになった。残額は、図書の購入にあてる予定としている。
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Research Products
(4 results)