2018 Fiscal Year Research-status Report
制度改革後の特別区における協議と調整のメカニズムの研究
Project/Area Number |
17K03547
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長野 基 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50367140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 望 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70404952)
稲垣 浩 國學院大學, 法学部, 准教授 (30514640)
箕輪 允智 東洋大学, 法学部, 准教授 (80734243)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治学 / 地方自治 / マルチレベル・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東京都・特別区の間の相互作用を対象に、政府間での協議と調整のメカニズムの動態を解明するものである。具体的には都・区間ならびに区間相互での協議と調整メカニズムの史的展開、運用実態の調査(政策分野間での差異の分析を含む)を通じて、マルチレベル・ガバナンスに関する理論的知見の深化を図ると共に今後の大都市地域における自治制度に関する制度設計・運用への知見を析出することを目指す。 2018年度は実務者ヒアリング調査として、東京都・特別区間の「都区協議会」が地方自治法上に位置付けられた1998年の法改正において、直接の担当者として携わった都側担当者(東京都総務局行政部副参事(都区制度担当)/都区制度改革担当課長・当時)・国側担当者(元自治省自治行政局行政課課長補佐・当時)への聞き取り調査を行った。 理論研究では専門家を招聘しての研究会を開催し、都・特別区間での権限・財政配分制度における「制度均衡」の視点からの分析や、都区間における人事制度の史的展開(都から区への「配属職員」制度の廃止から、23区一体での特別区人事委委員会制度の成立、そして、給与水準等の各種基準の都・区での分離など)に関する知見を探求した。 政策分野別の事例調査では、渋谷駅再開発における国・都・区間の調整過程(都市計画分野)の調査などを行った。なお、都市計画領域については先行的に日本行政学会分科会で報告が行われた。 以上を通じて、今日の都・区間調整メカニズムの最も基本的な場である「都区協議会」制度の法定化過程の動態や、都区制度が持つマルチレベル・ガバナンスとしての理論的な特徴について知見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請調書に基づき2018年度は2017年度の引き続きの作業である「1.協議と調整メカニズムに関する理論的検討に特別区に関する理論的検討の継続」と「2.特別区の協議と調整のメカニズムの実態把握の展開」(インタビュー調査の継続と意識調査の設計・試行)、そして「3.制度改革の記録・資料収集」を柱として研究を推進した。研究実績で報告した各種のヒアリング調査等を経て、東京都・特別区間の協議と調整の様態に対して、国側の「制度官庁」たる自治庁関係者への調査も行うことができ、その歴史的変容への知見を深めることができた。ただし、申請調書に記載した特別区職員質問紙調査(試行調査)の実施には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に協議と調整メカニズムに関する理論的知見をさらに深めるため、大都市行政、都市研究の学識者を招聘した研究会を開催して検討を深めてゆく。第二に都・特別区間の協議と調整のメカニズムの実態把握を行うために、東京都職員(東京都総務部行政局区政課ほか)・特別区職員(特別区長会事務局を含む)等へのインタビュー調査を2018年度に引き続き継続実施してゆく。この中では、個別政策領域でみる特徴を探索し、それらを統合することで比較研究としての知見の析出を図る。第三に都区間調整に関する史的展開を把握するために引き続き制度改革の記録・資料収集を進めると共に研究期間内に収集したそれら各種資料のデータベース化を進めてゆく。第四に特別区職員の都区間協議に関する姿勢と意識を探索するべく質問紙調査を実施する。第五に研究成果の中間報告(発信)として自治体学会等の自由公募企画(乃至はポスター報告)に応募し、研究成果を発信する。第六に以上の活動を踏まえ、成果報告論文の執筆に取り組む。
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Causes of Carryover |
2019年度には(1)理論的検討を図る研究会開催に伴う講師謝金や記録作成(反訳)費、(2)インタビュー調査での調査対象者への謝金や記録作成(反訳)費用、(3)資料収集とそのデータベース化を進めるための複写費や交通費、(4)質問紙調査票郵送費ならびにデータ入力の人件費、(5)中間成果報告のための学会参加・報告旅費の発生が見込まれる。 使用計画については、(1)協議と調整メカニズムに関する理論的検討への研究会では研究成果とりまとめを行うことを含め年6回程度の開催を予定する。(2)特別区の協議と調整のメカニズムの実態把握を進めるためのインタビュー調査では都区財政調整度を区側で司る特別区長会事務局への調査を行うと共に、各種の政策分野別担当部局職員への調査を引き続き行う。(3)都区間調整に関する制度改革の記録・資料収集とそのデータベース化においては公益財団法人・特別区協議会(特別区自治情報・交流センター)、各特別区の図書館・区政資料室(公文書管理組織)等の所属資料の収集・データベース化に加えて、過去の行政実務担当者が保有する資料の収集も行い(必要に応じて情報公開請求なども活用する)、データベースを充実させてゆく。(4)特別区職員質問紙調査については、年度前半での調査設計ならびに小規模サンプルでの試行を行い、そこからの修正点を調査票に反映したうえで年度後半に調査票配布・回収を実施するものとする。
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