2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental study on formation and reform of confidential expenses system in modern Japan
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17K03558
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
小山 俊樹 帝京大学, 文学部, 教授 (90454503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 大輔 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 研究員 (40731435)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代日本 / 機密費 / 内閣 / 外交 / 改革 / 陸軍 / 警察 / 公文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の政治研究の一環として「近代機密費制度の形成と改革」を解明し、これまで重要性が指摘されながらも、史料実証的に検証が困難とされてきた機密費の制度的実態について基礎的な知見を積み重ねることを目的とした。その過程で、いくつかの重要な史料群および、制度的画期を見出すことに成功し、本研究の特徴である歴史学的アプローチの有効性を確認することができた。具体的には、当初の予見に近い形で、近代公文書群および政治家の私文書群から重要な情報を見出しえた。とくに今回、立命館大学所蔵「西園寺公望文書」に関する追補的調査はもちろん、上海での海外調査によって国外での機密費使用痕跡を確認したこと、さらに京都府行政文書などの地方に残る公文書文書から、草創期の機密費制度形成にいたる道筋を確認できる史料の全体像を得られたことなどは大きい。また、地方などの新聞史料には、公文書情報ほどの正確性は欠くものの、当時の世論の機密費制度に対する関心や反応などが残されており、考察の重要な一助となることが確認された。さらに研究協力者の助力を得て、戦後占領期におけるGHQの機密費制度に関する調査資料や、外交史料館に残る外交機密費文書の整理を進められたことは、研究成果の包括的な公表に向けた活動として意義のあるものであった。本研究の直接的成果としては、原敬(首相・内相・立憲政友会総裁)の近代機密費制度との関係、および機密費観について専門誌上に公表した。本研究機関の採択期間中に部分的であれ成果公表に成功したことは、史料集積状況・研究分析の質の高まりを示し、研究状況の打開にも見通しをつける重要な画期となった。以上は採択期間中の活動と成果を概要的に報告したが、研究上の作業は現在も継続されている。今後は今回の研究で明らかになった世論分析などの課題をふまえ、包括的な機密費研究の集大成を目指し、さらに本格的な成果公表を期す。
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